視点:祐一



やあ皆さん、ごきげんよう!
俺の名前は相沢祐一。
今日もミステリアスな漢を目指す、今流行りの17歳さっ!(特に流行っていません。)
腕の無い駄作者のおかげで遅れたけど、やっと俺の視点になってくれたよ!

長かった…三話分は長かった……

さて、テンパった自己紹介はこれくらいにして、現在の状況をお知らせしよう。



「大人しく金目の物、置いてけや。そうすりゃ命までは盗らねえよ。」

ごもっともなお兄さん'Sにばっちり囲まれてます、はい。



第四話 戦え僕らの○○れんじゃー




時をさかのぼること二日前。

「ええっ!もう行っちゃうんですかっ!」
栞がテーブルに身を乗り出して叫んだ。
「ああ。以前から依頼を頼まれていてな。早めに『王都カノン』の中央ギルドに行かなきゃなんないんだ。そこに呼び出されたんだよ。」

ここはスノーフォート領内の町の一つの『ソナタ』にある、美坂家のとある一室。
香里に殺されかけた暴れられた後、栞の治療と香里の救出のお礼+暴れたお詫びとして、美坂家に泊まらせてもらった。

「急ぎの用なの?」
こちらは興奮した栞に対して、冷静な香里。
「いや、特にそうでもない。けどなるべくなら早めに行ったほうがいいだろ?」
「でも、まだ全然お礼してませんよ!?もっとゆっくりしていけばいいじゃないですか!」
「まあ、それも考えたんだが…」
「他にも何かあるのかしら?」
「すぐに二人の両親が帰ってくるだろ?そん時に一家団らんの邪魔したくないだけだ。」
「あら、そんな事気にしなくてもいいのに。」
「そうですよ。祐一さんなら大歓迎です。」

現在二人の両親は栞の治療の為に旅に出ているらしい。
最も、栞が死ぬはずだった一週間後までには戻る予定だったので、そこまで遠くにはいないとのこと。すぐに帰って来るそうだ。

「お前達がよくても、俺は気にするから…その、すまんな。」


一瞬の静寂。
その静寂を破ったのは香里だった。


「分かった。見送るわ。」
「お姉ちゃん!?何でですか!!?」
「栞。」
「?」
香里は栞を手招きで呼び寄せ、栞は香里の行動に疑問を持ちつつも、香里に近づく。
二人とも何故か顔が真剣そのものだ。

「…………………………でしょ?………………じゃない。」
「お姉ちゃん、………………ですぅ。」
「だから……………………」

「おーい…」
二人の声が小さすぎて全然聞こえない。
なんだかちょっぴりのけ者気分だ。くそぅ、寂しくなんかないやい!

んっ?二人が離れた。どうやら終わったみたいだな。

「ごめんなさい。貴方には話し辛い事だったから…」
「そうか……じゃあそろそろ行くわ。泊めてくれてサンキュな。
…そんじゃな。」
俺は荷物が刀一本と収納用のペンダントしか無いから、出かける用意はいつでも出来ている。


俺は旅人。別れには慣れている。
だが、あまり長居し過ぎると、別れにくくなる。


「あっ、祐一さん。」「相沢君。」
「んっ?」
二人に呼び止められ、俺は彼女達の方に振り向く。
二人の別れの挨拶は

「「またね。」」

だった。




「祐一君、もう行くのかね?」

美坂姉妹に見送られてすぐ、ミックさんに声をかけられた。

「ええ。ちょっと用事がありまして…」

「…まあ、君は旅をしているそうだから、仕方ないといえば仕方ない。わしが言うのもなんだが、無理をしてはいかんぞ。
おっとそうそう、君に言っておきたい事があった。
…ありがとうな。」

「ああ、病気の事ならお構いなく。俺が勝手にやった事なんで。」

「それも感謝してるんだが、もう一つ、あの二人の仲を取り持ってくれた事に、感謝したい。
栞ちゃんに演技させたのも、すぐに仲直りさせたかったからだろう?」

「…ただからかいたかっただけですよ。」

「君も損な性格だな。
ところで、馬はいいかね?」

「いえ、歩いて行きますんで。
それじゃあミックさん、お元気で。二人に宜しく。」

「ああ。君も元気で。よい旅を!」

こうして、俺は少ないながらも、暖かい人達に見送られてソナタを後にした。







「以上、相沢祐一17歳、ほろ苦い青春の一ページであった、と。」
「何をゴチャゴチャ抜かしてやがる!とっとと出しやがれ!」

で、現在『ソナタ』と『カノン』を結ぶ旅街道の途中。
あと一時間程歩けばカノンに着く場所で、俺はこの山賊っぽい輩に遭遇したわけだ。

「「「「「『っぽい』じゃねぇ! 俺達は立派な山賊だ!!」」」」」

全部で五人か………ハァ…こんな雑魚共に関わると後々面倒なんだけどな。
見た感じこいつら素人だし。

「コ、コイツ…雑魚だと……テメエ!」
「カァ兄!こんなふざけた奴、殺っちまおうぜ!!」

あれ? また俺

「声に出てんだよおぉーー!」
「あ、やっぱり。」
「ブチ殺す!!」

赤い鉢巻きをした男が俺に青龍刀で斬りかかる。
俺はそれを、足をずらし身をよじって避け、避けた時の勢いを利用してそのまま回転。赤いヤツが振り終わった瞬間に回転の勢いを肘に乗せ脇腹に一撃。
「……ッ!!!」

はい、一人。

「カァ兄貴ぃっ!うおぉ!」
そこを青い手袋をした男の槍が俺を狙って襲いかかる。
でも、奇襲は黙ってやりましょう。
その槍を楽々かわした後、青いヤツに詰め寄り、顎に飛び膝蹴りでダウンさせる。
同時に赤いヤツが地面に沈む。

二人目。

「チィッ……」「強え…」「…」
後は黄色の眼帯の男に、白い肩当の男、黒い鎧の男の三人。

「…のヤロォォォォーー!」
「よせっ!キィ坊!まだ早い!ちくしょお!」
黄色いヤツが白いヤツの警告を無視して俺に突っ込んでくる。手には刃渡り30p程のナイフ。
一方白いヤツはかなりでかい両手斧。黄色のヤツのすぐ後ろ。
それにしても、遅い。ナイフ使うならもっと素早さを上げろ。それに両手斧は略奪には向かないぞ。
とりあえずナイフを右手の鞘をつけたままの刀で弾き飛ばし、余ったもう片方で鳩尾に叩き込む。
ちなみに俺の刀は俺の『力』で鞘に入れたまま使えるようになっている。

兎に角、三人目。何か違和感を感じる。

「うおぉぉぉ!」
意識を失って俺に倒れこんだ黄色いヤツを突き放す。
斧は何の躊躇いも無く、俺に向かってくる。仲間の事ぐらい考えろっての。
まあこんな遅い斧簡単に避けれるけど、特別出血大サービス。




俺は『力』を使い(っていうかいつも使ってるんだけど)向かってくる斧を左手一本で支えた

衝撃音も無く。刀で受け止めたわけでもなく。




「何ッ…」
何か言いたそうだったけど、とりあえず刀で顎叩いて黙らせた。

四人目。何かが足りない…

「…よし!覚悟しろ!黒焦げに「ほい。やる。」えっ?」
俺は持っていた自分の刀を黒いヤツに向かって投げ捨てた。と同時に相手に弧を描くよう横から接近する。
「しまっ!炎焦 弾フレイム ブレ…ドォ!」
横から接近したあと更に黒いヤツの後ろに回り、延髄に手刀で気絶させる。
詠唱が遅い。それに魔術は詠唱完了したら能書きたれずにとっとと撃った方がいいに決まってんだろ。
近くに仲間がいなければの話だが。

これでラストの五人目。

結局違和感の正体は掴めっ…!

殺気を感じ、俺は横に飛びのく。ついでに黒いヤツも脇に蹴り飛ばすのも忘れない。
すると俺が立っていた所に、三本の矢が。

戦闘終了直後を狙うとは、まあまあイイ線いっている。
相手が俺じゃなければ。

「へぇ。やるじゃない。」
街道脇の木の陰から、ピンクの髪の女が姿を現した。右手にはボウガンが。
その姿を見た時、頭につっかえてた何かが俺の中で取れた。
思わず俺は笑いをこらえる。
「アタシの矢を避けるとはねぇ…ってアンタ、どうした?」

これだ。これだったんだ!違和感の正体!

「まさか怖くて動けないのかい?」
「…アンタの名前ってモモ、とかか?。」
「!どうしてアタシの名前を!」

ビンゴ。
やっぱり赤・青・黄・白・黒ときたら、ピンクの紅一点は必要だよな。
一人多いけど気にしてはいけない。


「いや、丁寧にありがと。もういいや。すっきりしたし。そんじゃおやすみ。」
「なっ……」
ちょっとだけ本気出して、一瞬で間合いを詰め、当身当てて黙らせた。
こんな雑魚にだらだら時間使ってても仕方ないしな。

戦闘終了。赤いヤツと交戦してからわずか一分程の戦闘だった。





「おーい。全員起っきろぉ〜。」
「く…」「痛え…」「ぐう…」
あの後俺はとりあえず全員木に縛り付けておいた。
「アタシ達をどうする気だい!」
恐らくリーダーであろう、ピンクの女がありきたりのセリフで怒鳴る。
なんか俺の方が悪役だな…ビシッと決めますか。

「説教。」
「「「「「「はあ?」」」」」」

まあ、普通は悪党の典型たる盗賊に説教かます奴なんていないだろうが、俺は普通じゃないんで。
おっと忘れる所だった。
「の前に幾つか聞きたい事がある。
一つ。カノンはこの方向で合ってるか?
もし嘘ついたら人前で歩けないような落書きが顔に一生残ることになるからな。」
「は?何言ってんだい?そっちに決まってるじゃないか。」
ああよかった。方向オンチの俺としては珍しい事だ。きちんと進めてるみたいだな。
「もう一つ。この辺でお前ら以外の盗賊とか山賊はいるか?」
「…アタシを入れてこの六人だけだよ。
最近はもう一つアタシ達とは違うグループがいるみたいだけどねぇ。ホラ、あの最近ウワサの人殺し集団さ。」
なるほど、例のアレか。確かギルドで聞いたな。


『ディアボロス』
最近名前が出てきた盗賊団で、そいつらに襲われた者はほぼ確実に殺されるという殺戮集団。
主に商隊をターゲットとし、必ず誰か一人を残して他は全て殺してしまうのが特徴だ。


けっこうヤバい奴等が出てきたな。
「そうか。よろしい。それじゃあお待ちかねの説教タイムだ。時間もったいないから簡潔に話すぞ。」
そんなバカにするような目で見てるなって。

「俺、暫くはこの辺にいるから。もし今度お前らが強盗だの、人を殺した、なんて聞いたら、その時は」







「殺す。」





「ヒィ!」「…」
俺はギリギリ気絶しない程度の殺気を込めて睨んだ。
あ。半分は気絶したかな?
「んじゃ、改心記念にこれを食べさせてあげよう。なぁに、忘れられない思い出になるぞ?」
ペンダントからオレンヂとスプーンを取り出し、六人それぞれに一口ずつ放り込む。

「「「「「「TMW`%MU)Q$T$!$=#&(!~!(&!(#~)%$%!!!!!!!(解読不能)」」」」」」

うし、お仕置き完了ってな。
おそらくこいつらはまだ誰も襲っていないだろう、新参者だ。
だから『お仕置き』で済ませた。


さてと…無駄な時間食ったな。せっかく順調なんだから、邪魔しないでくれ。


気を取り直して、いざ参ろうか。


王都カノンへ。





















おまけ。

「誰かぁぁぁぁぁ!その音を止めてくれぇぇぇぇぇ〜〜〜〜」

「もう…ゴールしてもいいよね……」

「ああ………空が落ちる……」

「…大崎五反田目黒恵比寿渋谷原宿代々木新宿新大久保高田馬場目白池袋大塚巣鴨駒込田端西日暮里日暮里鶯谷上野…」

「我が魂魄百万回生まれ変わってもぉぉぉっっ!怨み晴らすからなぁぁぁぁ!!!」

「いいか!ダンボールを侮るな!潜入作戦スニーキングミッションでは欠かせない代物だ!ダンボールはもう一つの己として、愛情を込めて扱え!」




結局俺を襲った山賊一味は、通りすがりの商人に拾われた。(奇声をあげ続ける様が不気味すぎて放っておけなかったそうだ)
その後すっかり改心した彼らは、近くの町の自警団に入団した。

だがオレンジ色を見ると、彼らはいつも同じことを言う。



オレンヂ怖い」と。







あとがけ。

bou  「やっとしょぼいけどバトルが書けた、第四話。この話のコンセプトは、『祐一をかっこよく戦わせよう』です。この話は書かなくてもよかったんですが…まあちょっとした休憩みたいに思って下さい。
さて、今回のゲストは…偶にはメインキャラ出そう。なんちゃって病弱アイスジャンキー娘・栞ちゃん!」

栞 「なんちゃってじゃ無いです!原作ではちゃんと病気ですっ!」

bou  「(アイスジャンキーは否定しないんだな。)このSSじゃあ、病弱だったお前はいないからな。
ではでは、今回の『あとがけ。』は祐一君はなんで盗賊達が素人だったって分かったのか? です。 」

栞 「そういえば、一発で素人だって見抜いてますねぇ。」

bou  「その辺は下に箇条書きでまとめたから見てね。この世界の盗賊のプロは大体こんな感じ。」




・ 一人で旅をしている者は襲わない。

モンスターにいつ襲われるか分からないから、一人で旅をしている人は大抵強いです。
それに一人だと分け前も少ない。まさにハイリスクローリターン。

・ 奇襲は基本。

先に足止めしていては相手に迎撃の準備をする時間を与えてしまうから。
荷物が傷つく可能性もあるが、こちらに被害が出るよりはいい。

・ 人数は多めに。

大量の荷物を運ぶために護衛をつけるのは当たり前。
獲るほうの人数が少ないと返り討ちの可能性が高く、おまけに持ち運びにも時間がかかる。




bou  「こんなもんですな。あくまでこの世界の基準だから、現実は違うのかもしれませんが。」

栞 「強奪そんなものなんて、文明の利器チャカとかハジキで一発ですぅ。」

bou  「…それがあるなら苦労しねぇよ。
おっと、そろそろお時間。それではまた。」

















栞 「ところで、祐一さんの『力』って結局何ですか?」

bou  「…秘密。今は皆さんの想像にお任せ。とりあえず反則級なので、あんまり彼には戦って欲しく無いなぁ。ホントにではでは。」





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