嘘だっ!!
















Lyrical Nanoha StS After―リリカルなのはSアフター

Phase XXX―感謝と決別























「嘘、嘘やっ!!!」

静まり返るリビングに響き渡るやや甲高い声。
部屋に篭る4人の表情はみな暗い。
なんで、なんでや……。
誰からも還ってこない返事が心を締め付ける。
今まで一緒に楽しくやってきたやないか。
なぁ、なんで―――

「なんで、"お別れ"なんてせなあかんのっ!?」

それは一つの悲しい別れ。



















順風満帆。といえば嘘になってしまうが、それなりに充実はしていた。

私――八神はやて――は、今年で22になります。
私自慢の部隊、機動6課、を立ち上げて早3年。
なのはちゃんたちと出会ってもう13年。
なんや、生まれて半分以上はあの娘らと一緒におった計算になるんか。

最近では新たに入った子たちをスバルやティアナが指導してくれてる。
自分で言うのもなんやけど……機動6課はほんとに素晴らしい部隊になったと思う。
ほんま、色んな人に助けられて、感謝してもし足りないくらい。
そんな中、ようやく仕事も落ち着いてきて、4ヶ月ぶりに東京にある
自宅へみんなと戻った矢先――

「な、なぁ……冗談、なんやろ?」

突然シグナムたちから別れを告げられた。






「主はやて、夜天の魔道書の効力がもう……」

「すまねぇ、はやて――」

「はやてちゃん……もっと早く言うべきでした……」

沈痛な思いで騎士たちが謝罪する。
だが、そこに涙はない――おそらく、ずっと前に気づいていたのだろう。
自分たちがもうそれほど長く留まっていられないことに。
頭が真っ白になる。何も考えたくない――嫌、嫌や、こんなのっ!!
13年前からずっと一緒にやってきたやないか……。
私とシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、それに―――?

「ザ、ザフィーラ……リィンフォース?」

動転していた心が僅かに冷静になる。
キョロキョロと辺りを見回すが、盾の守護騎士と小さな騎士様の姿が見当たらない。
そういえば、ここ1週間ほど姿を見ていない。
シグナムたちからはしばらく別部隊へ派遣されるって……。

「二人には先に――還ってもらっています」

「還るって……」

「もう、我ら三人分を起動させるので精一杯なのです……」

桃色の髪の女性――シグナムからのあまりにも残酷な解答。
忘れていた―――彼らはプログラムなのだ。
共に生活し、共に笑いあうことで―――忘れようとしていた。

『主はやて、一つだけ心に留めておいて欲しい』

『はやてちゃん、夜天の魔道書は――無限じゃないの』

いつの言葉だっただろうか。
あの時は笑い飛ばしていたのに――不意に現実になったことを悟る。




「……いつまでなん?」

「保って……あと一日かと」

俯いたまま愕然とする。握っていた拳は力なく垂れ下がり

ぽたぽた

代わりに涙が零れる。
一日って……私、明日からどうすれば良いん……ねぇ……?

「―――」

「―――」

言葉が消える。あるのは外から聞こえるシトシトという雨の音のみ。

プルルルル

不意に1階に備え付けられていた電話が鳴る。
誰も出ようとしない―――

プルルルル

まだ鳴っている……しつこい―――!!
この空気が耐えられなかったのか、はやてがやや乱暴に受話器を取る。

『あっ、はやてちゃん? なのはだけど――』

「――――」

『あ、もしもーし、はやて隊長!? 今から6課の打ち上げやるんですけど一緒に――』

『こら、スバル……えっと、フェイトだけど今からこっちに来れ――』

ガチャン

強引に切る。
はやての表情は能面のように無表情。
受話器を置いた手がプルプルと震えている。

「はやて……」

はやてが心配になったのかヴィータが近くに来て見つめている。
ヴィータの悲しそうな目に、ハッとする。
思考が徐々に冷静さを取り戻す。
そうや、時間がない―――!!
残された時間はあと一日―――なら、それは騎士たちのために使う!

「みんな……"打ち上げ"しよか?」








「星がきれいですねぇ」

「ああ……本当にな」

シャマルとシグナムが庭に座りながらシャンパンを片手に空を仰ぐ。
その隣にいるヴィータはジュースをちびちびと飲んでいる。
はやてはふと―――懐かしさを感じる。
目まぐるしい日々の中で忘れていたが―――ここから始まったのだと。

(あの頃はみんな無理してたんやろな……)

自分のために管理局の人間たちと戦って傷ついて……。
それでも―――みんな笑顔だった。みんな毎日を精一杯生きていたんだ。

「はやて」

「なんや、ヴィータ?」

自分の隣にちょこんと座ると真面目な顔でこちらを向く。
気づくとシャマルとシグナムもこちらを向いていた。

「あたしは―――はやてに会えて良かった」

やめて――

「私も、主はやてに出会えたことを誇りに思います」

もう、やめて――

「はやてちゃん――いつまでも見守っていますからね」

―――

その日、八神はやてはひたすら泣き続けた。



















あれから1年。私は管理局を辞めて東京に戻って生活しています。
戻ってすぐ看護学校に編入し、来年の春には市内の病院で働き始める予定です。
なのはちゃんやフェイトちゃん、機動6課の人たちは最後まで引きとめようと
色々説得してくれたけど、私の決意は微塵も揺らぐことは無かった。
管理局からは復帰願いの手紙が何通か来ていたけど、中身は見ずに捨てた。
もう―――私の空は終わったんよ。

13年という年月。長かったような短かったような。
私が魔法というものに出会って学んだこと、泣いたこと、驚いたこと――
そろそろ思い出という蓋をしてあげようと思う。

ブラウンの髪を腰まで伸ばした女性――八神はやては墓の前でしばらくの間
両手を合わせて祈っていた。
墓に刻み込まれた文字には―――

『ここに眠る私の愛しい騎士たちへ―――"ありがとう"と"さよなら"を送る』




















お終い




















独り言

な「くっくっく……これも次元連結システムのちょっとした応用だ」

テ「風のランスター、参るっ!」

ス&ギ『トゥインロードっ!!』

フ「みんな……ゼオライマーの見すぎ」

何もかもが台無し( ´ー`)
例によって作者の技量向上のための作品です。
稚拙な文章ですが生暖かい目で見守ってやってください。
基本的にMなので批判も歓迎します。




作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル投稿小説感想板

に下さると嬉しいです。