「―――」

吹き荒れる風が心地良い。
もう既にココロなんかとっくに壊れているはずなのに――
あの娘を失った時にそんなものは

「―――は」

可笑しい。笑ってしまう。
なんと女々しい自分に。もう戻らない禍去に。
捨てたはずだ、弱い自分は。
誓っただろう、もう振り返らないと。

(どこまでも憑いてまわる……お前ってやつは)

心の中で相手に愚痴る。口には出せない――応えはもうないから。
だから想いは循環するだけ――もう、いいだろ。
僕は独りでもちゃんとやってます――煩い。
ああ、神様お願いだから――うるさい。

いつものように思考と矛盾は攪拌されていつもの疑問に変わる。

(なんで俺なんか庇ったんだ――なぁ)



――ミヤ





To a you side 三次創作 「そんな未来」






ジュエルシード事件、それに続く闇の書事件。
俺が魔法の世界へと足を踏み入れることになった2つの事件。
これに関わったことでなのはやフェイト、はやてに……挙げていけば切りがないが
とにかくこいつらと知り合い、分かち合い、時には血と拳を交えながら信頼と友情を
築き上げることになった。

これに関わりすぎたから――あいつは死んだ。

自惚れていたのかもしれない。
奇跡を起せる力が俺にはあると。
腐っていたのかもしれない。
みんなを俺が幸せにできるなどと。

『こちら機動6課所属、"独りきりの機動小隊(シングル・フォース) "――宮本・リョウスケ』

『あっ、リョウスケか? 心配したんやで、なんの連絡も――』

『対象物は発見されず。帰投する』

プツッ――……

隊長殿から通信を強引に切る。不意に哀しそうなはやての顔が浮かぶ。

(ああ、気づいているさ――)

あの少女が今も変わらず自分を想い続けてくれていることを。
だからこそ、自分の部隊が創設されたときは真っ先に俺に連絡を寄越し、
わざわざ俺なんかのために小隊枠を一つ削ってまで勧誘をしてきた。

「もうダメなんだろうな……」

つくづく救えない。救いがたい。
周りに撒き散らして、迷惑を掛けて、心配をさせて――

不意に脳裏にあいつの最期が甦ってくる。

人の死に際はキレイだと言う。
ヒトの散り逝く様は美しいものだと聞く。

でも――ミヤの死体はただの屍骸でしかなかった。

妖精は人々に神秘と希望を与えると何かで見た記憶がある。
魔法は人類に英知と繁栄をもたらす物だと講義された。

けど――ミヤの血で塗れたアイツは悪魔以下の存在。

(―――)

思考の渦に飲まれていたのか――気づけば囲まれていた。
というよりは――囲まれてやった。

(ち―――いないか)

目をチラリと動かすだけで状況を把握。アイツはいない。
代わりにいるのは――ガジェットドローンとか言ったか。
カプセル状の機械人形が俺を囲む形で展開している。

「起動しろ――」

そう、呟くだけ。
それだけで十分。

「<愛すべき屍の鎮魂歌(ミヤ・レクイエム) >」

カチリという音と共に腰に携えていた刀を抜く。
これが俺のデバイス――俺の贖罪。






(少し多いか――)

視認できるだけで五百余。本来なら魔道師一人でどうにかなるレベルではない。
ふん、関係ない。
鎮魂歌にとって"数"は問題にならない。
これは単独戦闘を想定した武器――独りで戦い抜く兵器。
アイツを殺せるだけの殺戮道具。
だからこそ、雑魚に秒単位の時間をかけるつもりはない。
機能限定解除(ドライブ・アルファ) >のための三行詩を紡ぎながらそっと刀を掲げる。

「奏でる歌は慈愛に溢れ―――」

右手に柄を、左手に刃を

「響く音色は永久の悪夢を魅せる」

詠う詞に誰もが聴き入る

「ひたすらに死と混沌を撒き散らす」

刀が強烈に発光し

『――踊れ、死天交響曲(シンフォニー)

光は全てを飲み込む



「半分か……」

それでもこの威力は脅威―――当然か。
鎮魂歌(レクイエム) は俺の生命と精神を媒介にする兵器。
母体は愛する者の屍骸と自身の左目。
狂っている――ふん、今更。

散漫とした粒子砲による攻撃をすべて刀で叩き落しながら
先ほどとは異なる機能を発動させる。

交響曲(シンフォニー) は効果範囲と威力以上に消費が大きすぎる。
連発すればそれは死に直結する行為。
別に死ぬことを恐れているわけではないが――まだ、やるべきことがある。
それを果たせずに朽ちていくのだけは避けたい――絶対に。

だから俺は刀に込められたもう一つの曲を体現させる。

(……震えろ――<殺戮前奏曲(プレリュード) >)

心の中でそう紡ぐ。前奏曲には解除のための詩は必要ない。
必要なのは―――敵を殺しつくすための俺の意思。
交響曲は己の脅威を一掃するための慈愛に満ちた哀しい詩。
ならば前奏曲は―――それは敵を惨たらしく殺戮するための無情なる刃。

瞬間―――世界の色が黒くなる。

ゴォォと地面が蠢く。空間が僅かに震える。大気が悲鳴を上げる。
リョウスケの殺戮意思でこの限定空間に生成された刃は全部で二千。
全てが敵に向かい攻撃を始める。
全てが敵の四肢を刈り取ろうと踊りだす。
胴体を寸断する。頭部だけを刈り取る。心臓部へと突き刺さる。最早原型すら残さない物。
斬る、薙ぐ、刈る、剥ぐ、殺す。その繰り返し。
反撃などない。全てが逃げ惑っているのだ。
全てが敵を無条件に陵辱する。
惨たらしかった。正気の人間ならば見ていられない光景。ぶちまけられた残骸は何かの
臓物の如く。
相手は機械だと理解できているはずなのに――それでも情を持ってしまいそうな。

踊りが終わるまで10秒とかからなかった。
残ったのは五百余の残骸と一つの生ける屍。

(これなら――やれる)

そう確信する。
鎮魂歌は俺が作った俺のためのデバイス。
アイツの命を奪えるだけの性能を秘めた殺戮道具。
なのは達はこれを使うのを止めさせようとするが――もう遅いんだ。
コレは俺の肉体と密接にリンクしている。
リンカーコアが極めて小さかった俺は――代わりに心臓と脳を器にした。
それでも足りない分は――愛する者の骸と光を失った左目で補った。
冒涜だ。魂への冒涜だ。死者への許されざる暴挙。
たぶん、死んだらお前には会えないかもな。

(くくっ……確実に地獄(アッチ) 行きだな)

造るのに3年かかった。
使いこなすのにもう3年かかった。
残りの寿命も――3年程度か。

あと3年――いや、もっと短いかもしれない。
あるいはその前に廃人になっているかも。
それとも――。

とにかく見つける、アイツを。
訳は訊かない、贖罪は受け付けない。
殺す、必ず。
それが俺がまだ生を許されているたった一つの理由。
死ねない訳。
たった一つの生き甲斐。

「必ず見つけだす―――」







独り言

2時間程度で書いたひどい妄想です。

ミヤ死亡、リョウスケ死の3歩手前エンド

戦闘描写の勉強も兼ねていたり(ぇ

救いなし、作者病気です('A`)







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