Kanon another story
〜World is Sky〜

第6話





商店街の裏道を2つの影が歩く。
2つの影は離れることは無く、伸びてゆく…


「などと感傷にふけってみた」

「え?」

「いや、なんもねぇよ」
ずっと続いたのなら、どんなによかっただろうか?
ずっと続くと思っていた。どんな時だって隣にいてくれると思っていたんだ。

「変なの」
クスリ、とケイが笑う。

「オレが変なのはいつものことだろ?」

「自分で言う事じゃないよ〜」
その言葉で今度はオレが笑う。

「そりゃそうだな」
またケイが笑う。
この時は思わなかった。この笑顔が永久に見れなくなるなんて。

「そういやぁ、明後日はお前の誕生日だったか?」
その言葉に意外そうに驚くケイ。

「おい…なんだその顔は」

「…覚えてて、くれたんだ…」

「ったく、ったりめぇだろが。毎年のことだろ?忘れるかよ」

「…嬉しい、よ…神…」

「…バーカ…」
頬掻く。照れくさかった。

「あっ、雪…」
雪が降り始めた。
ゆっくりと、そして…だんだんと強く。

「…急いだ方がいいかもな…だんだん強くなってきてる」

「ホントだね〜」
相変わらずのんびりしてやがる。

「ったく、そんなんだからいつまで経っても千夜さんが心配すんだよ」
神無月 千夜(かんなづき ちや)オレを引き取ってくれた、ケイの母さんだ。

「う〜〜、解ってるよ〜」
そう言うケイに…

(千夜さん、ケイには甘ぇからなー)
と言える訳も無く…

「でも暗いからな、慌てて転ぶなよ?」
とりあえず話題を変えることにした。
曲がり角にさしかかる。

「大丈夫だよ〜。私そこまでドジじゃ…きゃっ!!」

ステン
見事に転ぶ。ついでに手を繋いでいたオレも引っ張られるようにして転ぶ。

「…っで?誰がドジじゃないって?」
そのままの体勢で話しかける。

「う〜〜」

「ったく、お約束をしやがって」

「ゴメンね?だよ〜」

「いいよ、気にしちゃいねぇ…し」
その時、車のエンジン音が聞こえた。
…嫌な…予感がした…
オレはすぐに立ち上がりケイの手をひいて立ち上がらせようとした。

「早く立てって」
この道は車がギリギリ通れる分の道幅しかない。もしこの道に車が来たら…
…嫌な…予感がしたんだ…

「ちょ、ちょっと待ってだよっ」
慌てた様子で立ち上がろうとするが立ち上がれないでいた。

「どうした?」
聞き返す間にも車の音は近づいてくる。
…そうだ…嫌な予感はしてたんだ…

「…足を、捻ったみたい…だよ…」
そう言うケイの顔からは、真冬だというのに汗が吹き出ていた。

「大丈夫か?」
肩を貸そうとしたが、慌てているためか思ったように体が動いてくれない。
車が、この道に入ってきた。
辺りは暗くなりかけているというのに、なぜかその車はライトを点けていなかった。

「ケイ!」
焦る。ここまで焦った事は今までなかったかもしれない。
車は間近に迫っている。
スピードが落ちる気配はなかった。

(くそっ!ケイを抱いて道の端に!)
しかし、慌てたためか積もっていた雪に足を捕られて膝を付いてしまう。

(っしま…っ!!)
車が迫る。

「…神…」
ぽつり、とケイが呟く。「ごめんね…」と、言ったような気がした。
だけど、オレは聞き返す間もなくケイに突き飛ばされる。
次の瞬間…



ドンッ!!


キキキキキーー!!
一瞬の間の後、車が止まるのが見える。そんなこと…知ったことじゃなかった…



「…ケイ?」
周りを見渡す。
10m程離れた所で倒れているケイを見つけた。

「ケイ!」
慌てて立ち上がろうとするが右足が動かない。どうやら右足だけ轢(ひ)かれていたようだ。

「くそっ!」
左足だけでは立ち上がれず、ケイに向かって這って進む。

「くそっ!くそっ!」
その時程10mが長く、そして永く感じたことはなかった。

「なんで!なんでだ!?」
ケイの横に座る。ケイの周りの雪は…真っ赤だった。
その時には、車はもうどこかに消えていた。
そんなことも…どうでもよかった…

「ケイ!おい!しっかりしろ!」
ケイの肩を揺らす。
自然、声が震えた…

「なぁ…何で、目を開けて、くれねぇんだよ…」
この声が、聞こえてないのはわかってた。それでも、話しかけ続けた。

「頼むから、目を…開けて、くれよ…なぁ、ケイ…」
目の前が真っ暗になってゆく。ケイに触れている温もりも、同時に消えていった。

「認めねぇ、こんなの…認められるかよ……っ!!」
地面を殴りつける。殴りつけた地面は、もう、真っ赤だった…

「もうすぐ誕生日だぞ!?祐吾達だって…千夜さんだって楽しみにしてるんだ!!…だから…目を、開けてくれよ…」
その時、ケイの目が少しだけ開いた…

「…神…そこに、いるの…?」
話す声は聞き取りづらかった。

「ケイ!?…大丈夫か?」
そんな事…聞くまでもないことはわかっていた。
でも…もしかしたらって思ったんだ!奇跡だってあるかもしれない!今だけは神様だって信じられる!

「…神…この世の中にはね…奇跡なんて…ないんだよ?…神様だって…いないんだよ?」
ケイはオレの手を掴みながら涙を流していた。

「…」

「だから、ね」
涙を…流し続けていた…

「…」

「人は…死ぬんだよ…」
掴まれていたケイの手が地面に落ちた。

「…ケイ?」
ケイの温もりが…消えた…

「あ、あぁ…う、う…」
涙が止まらなかった。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!」





―――――


「…ん?」
辺りを見渡す。もう、真っ暗だ。

「やべっ、寝過ぎたか…」
すぐに立ち上がる。

「じゃな、今日は帰るわ」
墓に向かって挨拶し、丘を下る。





急いで家に帰った。
オレはあの日、たくさんのモノを失った。
その1つが、あの時轢かれた右足だった。
あの日以来、右膝から下が急激な運動や長時間の運動に耐えられなくなっていた。
だから高校に入る時、部活には入らなかった。
小学生の頃から続けていたバスケット…
悲しかったし悔しかったけど…
けど、それもよかったと思う。その分、家の手伝いが出来るようになった。少しは千夜さんに恩返しが出来ると思ったから…

「千夜さん!ただいま!」
オレはいつものように玄関のドアを開けた。

もう、あの時とは違う生き方しか出来なかった…
オレの隣にケイはいない…
バスケットもできない…
何もがんばる事がない…
だから、生活も変わった…
規則正しく、ケイに起こされることもなくなった…
授業もよく、サボった…
ケンカもよく、するようになった…
気付いたら、オレの周りには幼馴染(あいつら)しかいなかった…





オレは、もうダメなのか…?











to be continued


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あとがき


この小説を読んでいただきありがとうございました。
あとがきを7度勤めさせていただくのは作者ことアトラシアです。

ア「今回で7回目となりましたこの作品!今回のゲストは神に詳しい雪乃歌冷香さんです!」

冷「ども!」

ア「むお!素晴らしい反応!!(感動/涙」

冷「…何、泣いてンの?」

ア「えと…前回優易さんだったんです」

冷「ああ、それでか」

ア「はい…(涙」

冷「鬱陶しい!シャンとしろ!」

ア「はっ!了解です!(敬礼」

冷「っで?何が聞きたいの?」

ア「え〜とですね、神はいつ頃から変わりはじめたんですか?」

冷「う〜ん、やっぱりケイが死んでから、かな?」

ア「それから一年、今ではどのような感じで?」

冷「う〜ん、遅刻はするし授業はサボるし喧嘩はするし…俗に言う不良ってやつ?」

ア「神は、喧嘩が強いのか?」

冷「負けたってのは聞いたことない気がするけど…」

ア「ふ〜む、なるほどなるほど」

冷「っで、何でこンなこと聞くの?」

ア「いや、奴の弱みでもないかと」

神「ほぅ、んな考えてやがったのか」

ア「Σ(○◇○)」
唐突に現たわりにはポキポキと指を鳴らしていらっしゃる。

神「何してんだ?あァ?」

ア「ヒィ!ヤンキー!!」

神「…」





ぎゃあああああああああああああ!!



大変お見苦しいところをお見せしました。心より謝罪いたします。




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ご意見ご感想をいただけると非常!にありがたいです。
key_of_all@yahoo.co.jp←ご意見ご感想、または質問はこちらからどうぞ。
では、次回のお話までほんの少しの休息を…