新暦72年、春。

 目が覚めたイルドは、薄暗い部屋にいた。

 視界が妙に狭い事に疑問を抱きつつ、右腕を動かそうとして違和感。

 怪訝に思いつつ右腕に目をやると、本来在るはずの右腕が存在しておらず、その代わり義手の接続面がそこに存在していた。

「勝手ながら右腕と右目の治療はさせてもらったよ。あぁ、治療費はあとで請求するから安心してくれたまえ」

 不意にかけられた声に驚きつつも、イルドはその声の主へと視線を向ける。

 スーツのうえに白衣を着た男性が微かな笑みを目元に浮かべて、そこに立っていた。

 助けてくれたらしい白衣の男に、イルドは頭を下げて礼。

「あ、どうもありがとうございます」

「礼儀正しいね、イルド・シー君」

 見知らぬ男に名を呼ばれてイルドは困惑。

 そんなイルドの顔を見て、白衣の男は今度こそはっきりとした笑みを浮かべてその疑問に答えた。

「特に悪いとも思わないが、管理局に不法アクセスして調べさせてもらったよ。先日の実戦テストで事故を起こした第十三技術部の生き残りみたいだね。まぁ、管理局はすでに君の事を死亡扱いにしているみたいだが」

「…………“事故”ですって…?」

「知りたいかい?」

 白衣の男は指を鳴らして、訝しむイルドの目の前に空間モニターを浮かび上がらせて細かな詳細を見せる。

 映し出された情報を読み続けるうちにイルドの身体が震えはじめ、左の拳が強く握りしめられる。

「……あいつら…!」

 イルドの口から漏れた怒りに彩られた声に、白衣の男は興味を持ったように微笑。

「ほぅ、何か訳ありみたいだね。どうだい、私に話してくれれば力になれるかもしれないよ?」

「……………貴方はいったい誰ですか?」

「あぁ、済まない。まだ自己紹介をしていなかったね」

 今さらながらもっともな疑問をぶつけたイルドに、白衣の男は人の悪い笑みを浮かべて名乗った。

「私の名はジェイル・スカリエッティ。君たち管理局が犯罪者と呼んでいる者だよ」




◆Three Arrow of Gold −Another Story−◆

 ▼第四章:再会、血染めのホテル・アグスタ −アグスタ潜入戦−▼




 −新暦75年−

 時刻は深夜。

 場所はスカリエッティのラボ、イルドに与えられた私室。

 その部屋から苦悶に満ちた声が途切れ途切れに聞こえる。

「……あ……あぁ………はぁ……白い…光り………うで…」

 右腕の“義手”を取り外したイルドは、ベッドの上で何度も苦しそうに寝返りを打つ。

 全身は汗に濡れ、顔は苦悶に彩られたままで、うなされるイルドの左手が何度も胸をかきむしる。

 そして。

「……あぁぁぁぁぁあああっぁぁぁあぁぁぁぁあ!」

 自分が上げた悲鳴でイルドは目を覚ました。

 ついでベッドから転げ落ちるように飛び起きたイルドは、左手で口を押さえながらトイレに駆け込み、嘔吐。

 胃の中のモノ全てを吐き出すも、それから暫くのあいだイルドは嘔吐感に襲われ続けた。



 ◆◆◆◆◆◆



 翌朝。

 不快な汗とともに目覚めたイルドはシャワーを浴びてから、いつもの日課を済まして気持ちを切り替えた。

 そして家事仕事を一通り終えたイルドは自室で先日、恩師タードックから託された数枚の薄紙を手に、それらを何度も見比べて思考。

 一枚一枚べつべつに見るとただの書きかけの設計図にしか見えないが、それらを全て重ね合わせて光りに透かしてみると、完成された一枚の設計図がその全貌を明らかにする。

「……そういうことですか…先生も義兄さんもよく…」

 ついでイルドは空間モニターに映しだした数式やプログラムを検討。

「咲希さんのプログラムを残しておいて良かった。これで“トリニティ・システム”が完成する……問題はあの子が起きるかどうか…」

 そこでイルドは時間を見て、作業を中断。

 設計図をしまい直したイルドは、用意しておいた制服に着替えはじめた。



 ◆◆◆◆◆◆



「いつも変だが、今日は極めて変な服だな」

「うは、トーレさんも酷いことを言いますねー」

「いやじゅうぶん変なカッコだよ」

「イル兄、似合わないッス」

「あらぁ〜、普段の変なカッコのほうが“まだ”似合ってますわねぇ」

 管理局陸士隊の制服を着こんだイルドを、トーレ・セイン・ウェンディ・クアットロの四人が酷評する光景がラボの片隅で起きていた。

 さんざんな酷評を受けたイルドは諦めたように肩をすくめてこう言った。

「いいですか皆さん“変わった装い”と書いて“変装”と読むんですから、これでいいんです」

 人差し指を立ててそう言ったイルドに向けて、ディエチは穏やかな声で指摘。

「それはただの開き直りだよイルド」

「うん、いい突っ込みです。ならば、僕はこう言いましょう“だからどうした!”…と」

 完全に開き直ったイルドの様子に一同苦笑。

 イルドも微かに笑みを浮かべながら髪をオールバックにまとめてセット。

 最後に伊達眼鏡をかけて変装終了。

 直後。


 大爆笑。


 ウェンディとセインは腹を抱えて馬鹿笑い。

 クアットロとディエチはうずくまって笑い。

「なんだかなぁ…」

 右手を頭にやってさぁどうしたものかと思案し始めたイルドが、ふと先ほどから黙っているトーレへと瞳を向ける。

 するとトーレは。

「……トーレさん、我慢するぐらいならいっそ笑ってください」

 イルドの顔を見ないよう後ろを向いて肩を震わせていた。



 ◆◆◆◆◆◆



「ほぉ、思っていたよりも似合うね」

「どちらかというと普段のほうが似合っていますね」

「ドクター、ウーノさん。僕はもう素直に喜べません」

 陸士隊の制服を着たイルドを、いつもの歪んだ微笑のスカリエッティと、とくに感情を浮かべるでもなくウーノの二人が迎えるが、対して彼はいくぶん気落ちした様子でそう返した。

 しかし、二人はそれがイルドの演技であると判断。

 なぜなら、真紅の瞳が笑っているからだ。

「ところで義眼の調子はどうかな? 不備があれば調整し直すが」

「いえ、問題ありませんよ」

 失った右目の代わりに埋め込まれた義眼の色が“ルビー”から“サファイア”、そして“エメラルド”に変わりながらイルドは笑い、最後の確認を行う。

「ホテル・アグスタへの潜入でしたね」

「あぁ、骨董オークションのなかに、もしレリックとか使えそうなロストロギアでもあれば回収を頼むよ。まぁ、それ自体は君の“野暮用”のオマケで良いからね。今回の仕事は君が“主役”なんだから」

 空間モニターに映された情報の一項目を見てイルドは苦笑。

「また機動六課ですか、お忙しい部隊ですね。いや、それとも落ち着きがないと言ったほうがいいんでしょうか?」

「さぁね。そっちは好きなようにしてくれたまえ」

 警備の項目に“機動六課”の名があることに、イルドは皮肉を込めながらやれやれというふうに肩をすくめた。

「さすが“古代遺物管理部”とかいうご大層な名前だけあって、よく出てきます。たまには休んで欲しいくらいですよ。そうすれば少しは僕も楽が出来る」

「確かに。あの戦力は厄介だしね」

 そう言ってスカリエッティは何やら楽しげに笑い、イルドは疑問。

 イルドのそんな顔を見てスカリエッティは楽しげに答えた。

「笑ってすまないね。いやなに、君は“六課”という単語に良く反応するからね」

「そうですか?」

「ドクターの言うとおりです。今もイルドさんの義眼の色が変化しています。どうやら感情に反応してるようですが」

 ウーノにも指摘されたイルドは右ほほに手を当てるがさすがにわからない。

 鏡があればいいのだが、残念ながら持ち合わせていない。

 そんなことを考えていたら、チンクとノーヴェの二人が姿を現した。

「イルド、準備は出来たか……なんだ、その変な格好は」

「こいつが変な格好をしてんのはいつものことだろ、チンク姉」

 二人の容赦無い言葉にイルドは大げさにため息をつき、スカリエッティとウーノは楽しげに微笑を浮かべた。



 ◆◆◆◆◆◆



「ISシルバーカーテン〜」

 イルドという主が不在の部屋。

 ISを使用して自身の身体を隠したクアットロが足音を忍ばせながらイルドの自室に侵入。

「んふふふ〜、イルドちゃんがお出掛けしてるあいだにお邪魔しまぁ〜す」

 普段通りの人をからかうような口調でクアットロはイルドのデスクを荒らす。

「ん〜どこに隠してるのかしら〜」

 捜し物をはじめてから数分後。

「んっふっふっふ〜、見ーつけたぁ」

 目的のモノを探し当てたクアットロは“それら”をデスクの上に並べはじめた。



 ◆◆◆◆◆◆



「おや、八神一等陸尉……いや、今は二等陸佐だったな」

「お久しぶりですガラッド提督。今日はオークションに?」

「あぁ、骨董品が好きでね。君は警備かね? よろしく頼むよ」

 ホテル・アグスタのロビー。

 警備任務についていたはやては短く挨拶を交わして、にこやかに去っていく年配の提督の後ろ姿を見送る。

 そこにドレスをまとったなのはとフェイトがやってきた。

「はやてちゃんに聞きたいことがあるんだけど?」

「なんや、なのはちゃん。いきなりやぶからぼうに」

 不意の詰問に目を丸くすると、フェイトも何かを聞きたそうな瞳ではやてを見つめている。

「ねぇ、はやて。あのリニアの日から、シャマルさんもはやてもなんだかおかしいよ?」

「そうだよ、言ってくれなきゃ私たち助けられないよ?」

 二人の言葉が心から心配していることを理解しているはやては、逡巡。

 一拍の間を置いてから答えた。

「ありがとう。でもまだ情報が揃ってないんや…憶測だけで決めたくないんよ」

 ついで笑顔。

「でも約束する。あれの正体がわかったら絶対にみんなに話すって」

 心配を和らげようとするはやての笑顔に、なのはとフェイトは頷いて微かに笑顔。

「わかったよ、はやて」

「絶対に力になるよ」



 ◆◆◆◆◆◆



「ルーさん、お一人ですか?」

「イルドがいる」

「いえ、そうでなくて」

 ホテル・アグスタより離れた森のなかで、イルドは紫の髪の少女ルーテシアに会っていた。

 背の低いルーテシアと目線を合わせるためにしゃがんだイルドは、周囲を見やりながら再び問いかける。

「ゼストさんはいないんですね」

「ん。でもアギトがいる」

「どこにです?」

 みたび問いかけたその時。

「ここだぁーー!」

「んぉ……!」

 元気な声が響いた青空を見上げた瞬間。

 イルドの視界が黒くなって衝撃が走った。

 ついで顔面に受ける重みが無くなったイルドの目の前に、赤毛の妖精アギトが舞い降りた。

「よぉ、イルド。元気だったかぁーー?」

「ぼ、僕の顔を踏みつけるなんてアギトさん酷いですよ!」

 勢いよく踏まれた鼻を押さえながらイルドはアギトを非難。

 しかしアギトは両手を腰に当てて。

「うっせーよ、ここんとこお前いつも部屋にこもってばかりでアタシやルールーと遊んでくれないじゃんか。この引きこもり!」

 言われて思い出す。

 確かにこのところ、“出動→帰還→調整→出動→以下略”を繰り返していたし、それ以外の時間はほとんどラボでの炊事洗濯掃除の家事仕事ばかりであった。

 それを思い出し、イルドは二人に笑顔。

「すみませんね、お二人に寂しい思いをさせてしまって」

 笑顔のイルドに、ほほを染めたアギトは明後日の方向を見やって一言。

「べ…別に寂しくなんかねぇよ!」

 しかし。

「うそ。アギト寂しそうだった」

「ルールー、なに言ってンだ!」

「ははははは」

「イルド、お前も笑ってんじゃねぇ!」

 朗らかに笑うイルドにアギトが再び蹴りを入れるが、イルドはその蹴りを軽やかに笑いながら回避。

 無邪気に笑いあうイルドとアギト、そしてそれを眺めるルーテシアたちに新たに現れた第三者の声がかけられた。

「楽しそうだな」

 フード付きのコートを着こんだ一人の男が三人の顔を見やり、そのフードを脱ぐ。

 その男にイルドは笑みで返す。

「お久しぶりですゼストさん」

「あぁ、お前も元気そうだな」

 瞳を閉じてゼストも微笑。

「今度、鍛えてくれませんか?」

 イルドはこの寡黙な騎士を武術の師として尊敬し、慕っていた。ゼストたちがラボを訪れた際、暇があれば戦技について指南を受けていたのだ。

「今度な」

 快諾され、イルドは楽しげに。

「いやぁ、あそこって女性ばかりですからちょっと肩身が狭いんですよね。ゼストさんがいてくれると少しは気が楽なんですよ」

「……鍛錬はその口実か?」

「まさか、ちゃんと鍛えてもらいますよ。そのお礼にお好きなメニューも用意しますからお願いしますよ? ねぇ、ルーさんもアギトさんもお願いしますからゼストさんにお願いしてくれません? お二人の好きなプリンも作りますから」

 イルドの頼みに「旦那、たまには良いだろ!?」とアギトがフードを引っ張り、ルーテシアも「行く…」と袖を強く引いてゼストにお願いすると。

「……そんな事をしなくても騎士に二言はないぞ、イルド」

 しばらくの間、四人は穏やかな時間を過ごし、作戦決行の時間が来たイルドは仕事の依頼をした。

「それでですね、ルーさんには適当にガジェットを操ってもらって、ホテルにいる人たちと遊んで欲しいんです」

「……適当ってお前」

「ん、イルドわかった」

 あまりにも適当すぎるイルドの説明にゼストは瞳を閉じて沈黙し、アギトは呆れたような顔で、ルーテシアは右の親指を立てて了承。

 その仕草にイルドは笑みを浮かべて敬礼。

「では行って参ります!」

 冗談めかしてそう言ったイルドに、ルーテシアたちはそれぞれ一言。

「イルド、いつも変な服だけどそれも変」

「お前ってほんと変な格好が好きだよな」

「普段の変な服のほうが似合っているな」

 思わぬところで精神ダメージを受けたイルドは両手で顔を押さえて、その場にしゃがみ込んだ。



 ◆◆◆◆◆◆



 ホテル・アグスタの展望室。

 緑豊かな地上を眺めていたシャマルは、ポケットから取り出した銀のペンダントへと瞳を移した。

 思い出すのは真紅の瞳をした少年の笑顔。

「なぁ、シャマル。ちょっといいか?」

「え? な、なぁにヴィータちゃん?」

 ふいにヴィータに声をかけられたシャマルは慌ててペンダントをしまい込んでから、小さな騎士へと顔を向けた。

 ヴィータはそんなシャマルの反応に少々驚きつつも、問いかける。

「なぁ、シャマル。はやてもだけど、何か悩みあるんなら言ってくれよ」

 心から心配そうに言ってくれたヴィータに、シャマルも頷き笑顔。

「いま悩んでいることが現実のモノだったら、私もはやてちゃんもみんなに言うから。その時まで待ってくれる?」

「あ〜…お前がそう言うんなら、待つよ。それと……」

 髪をかきつつヴィータは励ます。

「その悩みが現実にならないように願っとくよ」

 赤毛の少女の言葉に、シャマルは笑顔で返した。



 ◆◆◆◆◆◆



「……私、やってけるのかな?」

 ホテル・アグスタの外。

 ティアナはひとり悩んでいた。

「隊長たちも、他のみんなもすごいのに……」

「おや、お疲れですか?」

「うひゃあ! だ、誰よあんた!?」

 驚くティアナに、とつぜん現れた陸士隊の制服を着た青年は一礼して笑顔。

「通りすがりの局員で、今日はここの警備です」

「あ、そうなの」

「はい、そうなんです」

 髪をオールバックにまとめて眼鏡をかけた局員は、にこやかに笑いながらティアナに問いかける。

「何かお悩みで?」

「あんたには関係ないわよ」

「冷たいですね」

「そりゃそうでしょ。いきなり会った奴に“はい悩んでます”なんてあんた言えるの?」

「なるほど、確かに言われてみればそうですね」

 ポンと手を打って納得する青年に、ティアナは右手を額に当ててため息。

 すると青年はポケットから小さなチョコレートを取り出して、ティアナにプレゼント。

「どうぞ。疲れているときの甘い物は美味しいらしいですよ?」

「任務中よ。いらない」

「一口サイズですから、すぐに食べれば気づかれませんよ」

 強引に渡されたチョコをティアナは渋々受け取り、乱暴に口に放りこむ。

 口の中に広がる甘さを感じるティアナの様子に、青年は笑う。

「風船みたいにいつも気を張っていたら、いつか音をたてて破裂しちゃいますよ。たまにはため込んでいた息をゆっくり吐いて、新鮮な空気を吸い込みましょう。それで、何か事が起きたら気持ちを切り替えれば良いんですよ」

「……あんた、変なこと言うのね」

「でも事実です。人間、休みも大切と言うことで」

 瞳を弓のようにしならせて笑う青年に、ティアナもつられて笑みをこぼす。

「あんた、やっぱりおかしいわ」

「褒め言葉と受け取っておきましょう」

 互いに微笑して、ティアナはさらに一言付け加えた。

「アンタ、その髪型と眼鏡、似合ってないわよ」

「言われ続けています」

 青年は肩を落として返すと。

「ティアいたー」

 スバルと、それを追いかけるエリオとキャロの姿があった。

「ティア探したよー…うん? この眼鏡似合ってない人は?」

 首をかしげつつ問いかけるスバルに、ティアナが答えるよりも早く青年は右手を胸に当てて微笑。

「僕の名はイルド・シー。六課の皆さん、以後“お見知りおき”を」

 何事か含んだイルドの物言いに、ティアナ達が眉を疑問に寄せる。

 直後。

 そこから離れた場所で爆発と轟音が起きた。



 ◆◆◆◆◆◆



 ガジェットの襲撃を受けたホテルは混乱に陥っていた。

「一般客の批難を優先! なのはちゃんとフェイトちゃんはガジェットを!」

 一般局員に指示を飛ばしつつ二人の親友に外を頼んだはやての耳に、どこかで聞いたことのある声が届いた。

 見ると子どもを保護したらしい青年局員が、避難誘導を行っている局員に子どもを預けている姿がそこにあった。

「すみません、この子、母親とはぐれたみたいで一緒に批難してくれませんか? 僕はこの子の母親がいないか確認に戻るので」

「あぁ、わかった。君も気をつけてな!」

「はい。ではその子をお願いします」

「……じゃあね、おにいちゃん!」

 局員に預けた子どもに笑顔で手を振る青年の横顔に、はやては時が止まった。

 髪をオールバックにまとめ、地味な眼鏡をかけているが、確かに三年前にシャマルを通じて友人となった少年の面影が残っていた。

「ちょ……ちょい待ちぃ!」

 はやては叫び、呼び止めるが、その青年は逃げる人混みに紛れて姿を消した。

 そして、はやては一拍の間を置いて念話。

「シャマル、ウチと一緒に来て!」



 ◆◆◆◆◆◆



「ルールー、もうそろそろいいんじゃねぇの?」

「ん」

 無機物操作能力を有する召喚虫“インゼクト”を操っていたルーテシアは、アギトの言葉にその手を止める。

 するとその頃合いを見計らっていたように、一機のガジェットUが空から舞い降りてきた。

「お嬢様ぁ、迎えに来ましたよぉ」

 U型のうえに乗ったセインが笑顔でルーテシアへと手を伸ばすが、そこで疑問。

「あれ、ゼストさんは? イル兄の連絡あったんですけど?」

「ん、後から来るって」

 差し出されたセインの手を握り、ガジェットに乗ったルーテシアは答え、今度は彼女から質問する。

「イルドは?」

「お嬢様、イル兄にお気遣いは無用ですよ。ほら?」

 空を見上げるセインに倣ってルーテシアとアギトが見上げると、イルド専用のカスタムガジェットが着陸態勢に入っていた。

 三人が見ているなか、ランディングギアを兼ねる伸縮式クローが大地に降りて着陸完了。

 あとは主人が呼ぶのを待つだけである。

 そのエイの姿をイメージさせるカスタム機に、アギトは呆れたように言った。

「ほんと、イルドは変な趣味してるよな」

「イルド、変」

「あはははは、それがイル兄の良いところですよ」

 三者三様のイルド評を述べてから、三人を乗せたガジェットは帰還するために飛び立った。



 ◆◆◆◆◆◆



「確かに、君の言うとおりガジェットはここまで来なかったな」

 若い局員に誘導されてホテルの一室に批難していたガラッド提督は、撃破されていくガジェットを窓から眺めて安堵していた。

「しかし、なぜ君はそう判断したのかね?」

「ガジェットは基本的にレリック……もしくはそれに相当するロストロギアの回収を目的に造られたモノゆえに、その周辺や武装した魔導師にしか敵対行動を取りません。ですから、出来る限りレリックから離れて敵対する意思を見せなければ襲われる確率は減ります」

 後ろに控え、かけていた眼鏡を胸ポケットに収めながら説明する若い局員の言葉に、ガラッドは得心したように頷く。

「なるほど、だから君は私にデバイスを手放すようにしたのだな」

「はい、そのとおりです。ですが、もう一つ理由がありまして…」

「何かね、もう一つの理由とは?」

 訝しみつつ振り返る提督に対して、青年は綺麗に整えていた髪を乱して一言。

「貴方に武器を持って欲しくなかったんですよ」

 ガラッドの身体に鈍い衝撃が響く。

 驚愕に目を見開きながらガラッドが視線を落とすと、自分の腹にダガーが深く突き立てられていた。

「三年前…“第十三技術部”を覚えていますか?」

 青年が発した言葉にガラッドの瞳がさらに見開かれる。

「……まさか…貴様…!?」

「思っていたよりも管理局は無能ですね。ガジェットを出したぐらいで面白いくらい誘導に引っかかってくれました」

 笑顔で若い局員…イルドは突き刺していたダガーを勢いよく抜く。

 腹部からこぼれた真っ赤な血が絨毯を染めるなか、笑顔を浮かべたイルドは左腕にはめた“火竜の腕輪”を発動。

 鮮やかな真紅の炎が部屋に広がるなか、イルドは左手の人差し指を揺らしながら楽しげに言葉を続ける。

「貴方たちが試作機に手を加えるよう指示したのは知っているんですよ。すでに証拠も揃えてます。まぁ“今”のところ使う気はありませんが」

 傷口を押さえて膝をつくガラッドを、楽しげに見下ろすイルドの右目がめまぐるしい勢いでその色を変え続ける。

「気づきませんでした? 三年前のあの日、貴方たちの言う“事故”に関わった人間がこの三年のあいだに何故か“事故死”していることを? いやぁ、時間をかけただけあって管理局の皆さん、誰も殺人事件と思わなかったみたいで嬉しいですよ?」

 ガラッドの胸ぐらを掴んだイルドは強引に立たせて、その身体を窓へと押しつける。

「ちなみに今回は隠す気はさらさらありませんので、殺人事件です」

 笑顔を浮かべるイルドに、ガラッドが声も出せずに戦慄した瞬間。

 再び、ダガーが腹部に突き立てられた。

「これはソニックダガーといって、刃を高周波振動させることによって高い切断能力を生み出すとっても素敵なナイフです。じゃあ、いまの状況でこれを起動させたらどうなるんでしょう。とっても興味がわきませんか?」

「ゆ……許し……」

 慈悲を願うガラッドに、イルドは楽しげににっこりと笑顔。

「謝罪は天国にいる義兄さんと咲希さんにしてください。あぁ、でも貴方は地獄に堕ちるから……」

 にっこりと笑ってイルドは首をかしげ。

「…会えませんよね?」

 瞳を弓のようにしならせたイルドは「それでは」と前置きして。

「実験です」

 ソニックダガー、起動。

 部屋に響き渡る奇妙な音が断末魔の悲鳴をかき消し、真紅の彩りが部屋を染め上げ、その高周波振動が空気を伝って全ての窓ガラスを打ち砕く。

 そして。

「実験終了。ガラッド提督、お疲れ様です。お休みになっても宜しいですよ?」

 朗らかに笑ってイルドは物言わぬガラッドに終わりを告げた瞬間。

 炎を感知した防災システムがスプリンクラーを起動。

 人工の雨が部屋に降りそそぎ、瞬く間にその炎を消し去る。

 直後。

 扉が勢いよく開かれて、かつての友人たちがその姿を現した。

 その音に、ダガーを収めながらイルドは笑みを浮かべた。



 ◆◆◆◆◆◆



 勢いよく乗り込んだはやてとシャマルは、その凄惨な殺害現場に言葉を無くした。

 ガラスというガラスは全て割れ、加害者はその左手に被害者の骸を携えている。

 呆然とするそんな二人に、かつて聞いたことのある懐かしい声がかけられる。

「おや、思ったよりも意外に早かったですね。それとも僕の仕事が遅かったんでしょうか?」

 スプリンクラーの雨に身体をぬらせながら首をかしげて自問する青年に、立ち尽くしていたシャマルは震える声で問いかける。

「本当に…イルド君なんですか?」

 名を訊ねるシャマルへと、顔に真紅の化粧を施したイルドは濡れた髪をかき上げながら笑顔。

「お久しぶりですシャマルさん、はやてさん。三年ぶりですが、お二人ともお元気そうで何よりです。そして遅れましたがはやてさん、新部隊設立と部隊長就任おめでとうございます」

 懐かしい友人と再会したイルドは笑顔で喜び、挨拶。

 ついで思い出したように掴んでいた死体をイルドはガラスの向こう、すなわち外へと投げ捨てた。

「いやはや、お二人にはお見苦しいモノをお見せしてしまいすみません」

 深く頭を下げてイルドは謝罪。

 しかし、その顔は笑ったまま。

 そんなかつての友人へとはやては叫んだ。

「なんでや! なんでイルド君がこないなことするんや!?」

 叫ぶはやての声に、心底不思議そうにイルドは首をかしげて答えた。

「敵討ちが、そんなにおかしなことですか?」

「仇って…いったい誰のですか!」

「義兄さんと咲希さんですよ、当然でしょう?」

 シャマルの叫びにイルドは笑顔で即答。

 その答えにシャマルとはやての身体が硬直。

 しかし、一拍の間を置いてからはやては反論。

「いったいガラッド提督がどんな罪を犯したっていうんや!」

 対してイルドは淡々と。

「三年前、彼らはあの事故を引き起こしたんですよ。僕らが創りあげたあのデバイスに手を加え、暴走するように。さらにご丁寧に全部僕らのせいにして。すごいでしょう?」

「それが本当だとしても、殺していいわけない!」

「貴方たち管理局は何もしなかったでしょう? だから仕方なく僕が裁いたんですよ」

「だからといって!」

 抑揚のない声でイルドは笑顔で問いかける。

「管理局のお仕事とはなんですか? 悪を見逃すことですか? 家族を奪うことですか? 同じ局員を殺すことですか?」

 数日前に同じようにタードックに告げられた言葉に、はやては絶句。

 だが、シャマルがそれに続いて援護。

「でも、それ以外の選択肢が在ったはずです!」

「ははは、シャマルさん。相変わらず貴方はお優しい。でも貴方はこの目を見てもそれが言えるんですか?」

 言われてシャマルは気づいた。

 かつて燃えるようなルビーの瞳が、今は右目だけ変わっていた。

 イルドの昂ぶりに応じるかのように、右目の色が次々と変わり続ける。

「まさか…右目も……?」

「そうですよそうなんですよ三年前は事故は僕も右目も!」

 次第にたがが外れたかのようにイルドは嗤い、叫んだ。

「ほらさぁ僕はさぁ響くんですよ今も夢に見るんですよ奪われたんですよ知らないでしょう潰れたんですよ怖いんですよ眩しいんですよ味方殺しが疼くんですよ三年前が僕が右目が僕が今も夢に見るんですよぉ!」

 右目を虹色に輝かしたイルドは繋がらない言葉を乱立させて狂ったように嗤い、左手を掲げた。

 その左手から炎の弾丸が放たれ、スプリンクラーを破壊。ついでイルドは再び部屋へと火を放つ。

 燃えさかる炎の壁がイルドとはやてたちのあいだを遮り、窓を背にしたイルドの後ろに一機のカスタムガジェットが舞い降りた。

 機体に取り付けられた機銃がはやてたちへと照準を付け、イルドは肩越しにカスタムへと視線を向けて労いの言葉をかける。

「お迎えご苦労様です、メトロ」

『御大将イルド様、機械人形である小生などに勿体なきお言葉。もし小生に涙を流す機能があったならば、今この瞬間にこそ感極まって落涙しむせび泣くところですぞ』

 視覚センサーであるモノアイをせわしなく動かし、流暢に言葉を返したカスタムU“メトロ”に笑って頷いたイルドは、再びはやてたちへと視線を戻し、その両腕を軽く広げ、その瞳を静かに閉じた。

 そして。


「装・着」


 メトロの背部ウェポンベイが開かれ、そこに格納されていたプロテクターが飛翔。

 太陽の光りを浴びるかのように立つイルドの周りを各パーツは飛び回り、それらは脚から順にしてその身体に装着されていく。

 ブーツ、ベルト、チェストアーマー、ガントレットが装着され、最後のパーツ“シェルメット”を左手で受け止めたイルドは、閉じていた瞳を静かに開く。

 ついでイルドは思い出を語る。

「かつて僕たちは夢を語り合いましたね。貴女たちは“新部隊設立”という夢を、そして僕たちは“新たなデバイスを創る”という夢を」

 蒼き戦装束を纏い、その瞳に暗い炎を灯したイルドはかつての友人たちへと嗤った。

「笑顔で喜びを分かち合いましょう、互いの“夢”が実現したことを」

 紅蓮の炎の向こうで暗い瞳で嗤うイルドの笑顔は、三年前ともに笑いあった友人の笑顔ではなかった。

 その友人の変貌にシャマルとはやては目尻に微かな涙を浮かべ、叫ぶ。

「もうやめてください、イルド君!」

「投降してやイルド君! 悪いようにはせぇへんから!」

 二人の必死の呼びかけに対し、イルドは首をかしげて困ったように嗤う。

「イヤですよ、今さら管理局のルールに従う義理もないんですから。それと一つ、ハッキリとさせておきましょう」

 そこで嗤いを止めてイルドは、真面目な声で宣言。

「貴女たちが管理局にいてレリックを欲する以上、貴女たちは僕の敵です」

 かつての友人に毅然とした声で“敵”と告げられた二人は何かを言おうとするが、イルドはそれを遮るように別れの言葉を放つ。

「貴方たちと同じように僕もレリックを欲しています」

 コックピットハッチを開いたメトロへと軽やかに飛び乗ったイルドは、窓際に駆け寄ろうとする友人たちへ笑顔。

「それではお別れです。またお会いしましょう」

 別れの言葉を残し、ハッチを閉じたメトロは飛翔。

 加速。

 光りの軌跡を残して消えたかつての友人に、はやてはただ呆然と見送るしかなかった。

 そのはやての隣で、身体から力が抜けたシャマルは膝をつき、その瞳から涙がこぼれ落ちた。

「うそ……嘘ですよ……こんなの…………」

 うずくまり、銀のペンダントを握りしめたシャマルはただ泣き続け、はやてはその嗚咽の声を黙って聞き続けた。



 ◆◆◆◆◆◆



 ラボへと帰還したイルドは簡易報告を終え、シャワーを浴びて汚れを落としていた。

「血って落ちにくいんですよねぇー。まぁ今日みたいな場合、服は捨てるだけで済むから楽ですけどー」

 シャワーを浴びるイルドの頭にはすでに家事のことしかないらしく、そんなことを意味も無くつらつらと思い浮かべる。

 するとシャワールームのドアの向こうから、何やら楽しげなクアットロの声がイルドにかけられた。

「今日もお仕事お疲れ様〜イルドちゃぁ〜ん、ここにタオルと着替え置いておくわねぇ〜」

「おや、クアットロさん珍しく気が利きますね。ありがとうございます」

「んっふっふっふ〜ん、お礼なんていいのよぉ〜。ちょぉ〜っと機嫌が良いだけですからぁ〜」

 いつも面倒なことから逃げるクアットロにしては珍しいモノだと、イルドは感心しながら着替え。

 いつもの和服アレンジの私服に着替えたイルドは部屋に戻る道すがら、夕食のデザートはクアットロには少しサービスでもしようかとぼんやりとした頭で考える。

 そして部屋に戻ったイルドは、珍しく悲鳴を上げた。


 なぜなら、


 机のうえに、


 イルドが隠し持っていたエッチな本が、


 綺麗に、


 並べられていたからだ。


 そして、彼の悲鳴に集まってきた姉妹たち(クアットロ除く)に部屋に入られぬよう気をつけながら、クアットロの夕食にスパイスをぶちまけてやろうという、ささやかな復讐をイルドは心に誓うのであった。





 ◆NEXT STAGE◆


「イルド君、“本当”のフェクダと……“災害”の調子はどうだい?」

 紅茶を飲みつつスカリエッティは興味深そうに笑い。



「あ〜ら、つまらない反応ー。ここに来たころのイルドちゃんだったら、顔真っ赤にしてたのに」

 イルドの首に両腕を回したクアットロはその首筋に息を吹きかけて悪戯し。



『管理局の基地に殴り込みをかける……これはちょっとした冒険ですね!』

 大音量の音楽を響かせながら、“タードック救出”を自らに任じたイルドは第八基地へと飛び込んだ。



 次回・第五章:企む人々 −タードック救出戦−





◆◆◆説明補足・第四章:ソニック・ダガー◆◆◆

 イルドが常用している携帯装備であり、現在の主武装。
 刃を高周波振動させることによって高い切断能力を生み出す。
 起動すると独特の高音を放つため、周囲にいる人間はその騒音に頭を悩まされる。そのために使用はあまり好まれない。
 また、起動せずに普通のダガーとしても使用出来るが、切れ味はよろしくない。せいぜい突き刺しがいいところである。





◆◆◆ イルドとイルドの後書き座談会 −ロケ地・StS第六話の居酒屋−◆◆◆


眼帯付けた良ルド(TAG版)
「はい皆さんこんにちわ! 僕イルドです!」

義眼の悪ルド(TAG−AS版)
「はい皆さんこんばんわ! 僕イルドです! 二人合わせて!」

− 二人、声を揃えて手を打ち −

「「ダブるど!」」

− 空間通信が開き、ウーノがにっこり笑って一言 −


「面白いですね?」


− 空間通信、即座に消えて −

「「あぁーーー!」」

− 二人、声を揃えたうえでその場に頭を抱えて崩れ落ちる −

悪ルド
「………えー最悪の二度ネタで見事滑り落ちた“ダブるど”ですが」

良ルド
「……今回も後書き座談会はじめたいと思います」

− 二人ともテーブルに置かれている台本を読んで −

良ルド
「えーと、今回の話しで何か言いたいことありますか別次元の僕? 僕は言いたいことありますよ?」

悪ルド
「はいどうぞ」

− 良ルド、にっこり笑って −

良ルド
「シャマルさん泣かしやがって張っ倒すぞこの野郎?」

悪ルド
「はいスルーします」

− 良ルドが「ちょっと」と叫ぶが悪ルドはさらに無視 −

悪ルド
「えー今回の話しで僕が言いたいことですか? それはですねー………覚えていなさいよクアットロさん……コンチクショウ」

良ルド
「はい、僕汚い言葉使わない。さて第一章から登場してましたが、台詞ありは今回からの新キャラクター“メトロ”さんがついに登場しましたね」

悪ルド
「メトロは僕のパートナーで、色々とサポートして貰っています。これからも色々と出番があるらしいですよ? では次の話題です」

良ルド
「はいお次はですねー、今回ことあるごとに“似合ってない”や“変な格好”などと言われ続けた別次元の僕ですが、どうです? ちなみに僕は作務衣とか和服好きです大好きです」

悪ルド
「僕ら和風趣味ですからねー、雅やかに生きましょう。てゆーか、今日初めて会ったあの青髪少女さん、いきなり“眼鏡似合ってない人”は無いでしょう! 失礼ですよ、訴えて勝ちますよ! 滅びろ…(←注:ここだけ凄い低い声)」

良ルド
「そうですよ! 僕だって『TAG』ではプライベートな面がないから知らないでしょうけど、部屋着は“作務衣”が基本ですよ! ちなみに咲希さんは夏場だと上半身裸で過ごしてますよ! そっちのほうがやばいでしょうが! あとブーメランパンツが基本ってどうですか、あのボイン!?」

悪ルド
「え、なに、そっちの世界のあの人まだ“裸人”やってんですか!? 夏限定だと言っても勘弁してくださいよ! それともあれですか、咲希さんそんなに肉体に自信でもあるんですか! 確かにあの逞しくて分厚い胸板は羨ましいですが! くそ、あのボイン!」

良ルド
「えぇ、まだやってますよあの“裸(ラ)王”は! さすが外見モチーフが八神庵(K◇F)だけあっていつも胸元はだけてますよ、あのボイン! ちなみにあの裸王、寝るときブーメランのみのほぼ“全裸”ですよ全裸! さらに言わせてもらいますけど、あの“おっぱい魔神”シグナムさんと比べても良いくらいの立派なぶあつい胸板ですからね!」

− 空間通信が開き −

シグナム
「レヴァンティンの錆になりたいか?」

− 通信終わり −

良ルド
「……怖いよ〜」

悪ルド
「……あー、店の隅で正座してメソメソと泣かないでください。店員のおねえさんが不思議そうに見てますから。あと、それ僕も一回目の収録後にひっそりとやったんですから」

良ルド
「てゆーか、これ何処で誰が監視してるかわからないですよぉ〜…」

悪ルド
「あー僕もそれが心配です。このまま全員集合なんてことになったら僕ら吊し上げくらいそうですよねー」

− 現在目を光らせている人物はウーノ・シャマル・シグナムの三名です −

良ルド
「いやぁ〜、変なテロップ入れないで〜!」

悪ルド
「……本格的に後先考えて喋らないと大変なことになりますね…」

− 恐れおののきながら席に座り直す二人 −

良ルド
「あー…なんかテンション下がりましたねー」

悪ルド
「そうですねー……もう終わりにします?」

良ルド
「じゃあ、おあいそまえに連絡事項をお一つ」

悪ルド
「えー、拍手を送ってくださる方々にお願いします。拍手はすべて管理人リョウ様が手作業で振り分けてくださってます。ですので拍手を送る際は

 お手数ですが“作者名”もしくは“作品名”などをご記入くださるとリョウ様のご負担が減るのでお願いします。

 ほんとうに皆様のご協力お願いします」

良ルド
「別次元の僕お疲れ様ー。じゃあ今度こそ本当に終わりにしましょうかー。あ、おねえさんおあいそでーす」

− レジで −

悪ルド
「領収書お願いします」

店員のおねえさん
「あて名はどうされますかー?」

悪ルド
「じゃあ“嫌がらせ”も兼ねて管理局でお願いできます? え、駄目?」

良ルド
「あー、ならドクター・スカリエッティで……え、それも駄目? じゃあ、機動六課八神はやてでお願いします」

店員のおねえさん
「はい、わかりましたー」

良ルド&悪ルド
「「良いんですか!?」」



− 終了 −








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