Misuzu in Wonderland








シーン.1 丘の上


ある晴れた昼下がり、土手の上で、観鈴は暇を持て余していました。
そばでは、飼い猫のピロも眠そうにあくびをしています。

「お姉ちゃん?」
「なによ、今忙しいから後にして」

さっきからずっとこの調子で、一緒に居る姉はちっとも相手をしてくれません。
姉の読んでいる本を、ちらりとのぞいてみたりもしたのですが、
訳のわからない図形や、難しい字ばかりでなにが面白いのかさっぱり判りませんでした。

「はぁ……」

観鈴は、ため息をつくと、何か面白い事は無いかと、辺りを見まわしました。

「……?」

するとどうでしょう、観鈴の目の前を、2匹の白ウサギが駆け抜けていきました。
それ自体は、別にとりたてて『どう』という事は無かったのですが……

『おい長森、時間は!?』
『もう、20分過ぎちゃってるよ、どうしよう、間に合わないかも……』
『ぐあっ……何でもっと早く起こさなかったんだ!』
『起こしたよ! 私はちゃんと起こしたもん!! 大体、浩平が――』

ウサギ達は、口々に何かを喋りながら、全力で走って行きます。

「わ、うさぎさんが喋ってる……楽しそう……」

ちっとも楽しそうではなかったような気もしますが、とにかく観鈴はウサギに興味を持ったようです。
ピロはと言うと……どうやら全く興味が無いのか、そのまま眠ってしまった様です。

「うさぎさん、どこに行くのかな?」

観鈴は、ウサギを追って走り出しました。

しばらく走ると、ウサギは小さな穴に飛び込んで行きました。
観鈴もその後を追います。

穴の中は、しばらくまっすぐ続いていたのですが、突然――

「わ!?」

――下に落ち込みました。
あまりに急だったので、足を止める暇もありませんでした。

もっとも、事前に警告されていたとしても、止まれたかは怪しいところですが……
どちらにせよ、気付いたときには既に手遅れで、観鈴は深い井戸の中をゆっくり落ちて行きました。

「あ、あれ? あれ?」

井戸の中は真っ暗で、始めはなにも見えなかったのですが、しばらくすると、だんだん目が慣れてきました。
見ると、本棚や食器棚、机や地図などが周りの壁に貼りついています。
そのなかを観鈴はゆっくり、ゆっくりと落下して行きます。

何でこんなにゆっくりなんだろう?
と思うには思ったのですが、考えても判らないのでその事は置いておく事にしました。



その後、しばらく落ち続けたのですが、何時まで経ってもそこにつく気配はありません。
少し心に余裕ができた観鈴は、横を通りすぎて行く棚から何と無く瓶を手にしました。
その瓶には、【ジャム】という、ラベルが貼られていましたが……中は空っぽでした。

「にはは……残念」

観鈴は、瓶を別の棚の上に置き、何気なく下を見てみました。が、まだまだ底は見えません。

「どこまで落ちるのかな……? もしかして地球の反対側までついたりして。
 だったら、外人さんにも会えるのかな? でもなんて国かな……えっと、ふらんす?
 あ、でもわたし英語喋れない……みすずちん、ぴんちっ」

……ちなみにフランスの公用語は英語ではありません。
というか、彼女の頭の中にどういう世界地図があるのかは定かではありませんが、
日本の反対側はフランスではありません。

観鈴が、まるっきり見当違いの思索をあれこれしている内に……

ズシン……!

「い、いたい……」

どうやら底に辿り着いた様です。
割と大きな音が下のですが、怪我をした様子は有りません。
観鈴はすぐに起きあがり、上を見上げてみましたが、真っ暗でなにも見えませんでした。

「どうしよう……」

視線を戻すと、目の前にまっすぐな小径がのびていて、
そこを、さっきのウサギ達が走っていくのが目に移りました。

『急げ長森! 今日だけは絶対に遅れる訳には行かないぞ』
『そ、そんな事言ったって……あ、浩平、前!!』
『何っ!?』

その時、ウサギ達の目の前の角から、別のウサギが飛び出してきました。

ズバゴォォォォォォ……ン!!

先を走っていたウサギの、掌抵、肘、肩の三連撃が見事に決まります。

『……よし、邪魔者は倒した! さっさと行くぞ!』
『え、あ……うん』
『ちょっと待ちなさいよっ!!』
『なんだ七瀬!? 今、急いでんだ。後にしろ!』
『アンタ何考えてんのよ!?』
『後だ後! 何やってんだ長森!? 行くぞ!』
『あ、浩平!?』
『こら!! 待ちなさい!!!』

ウサギ達は、そのまま角を曲がって走り去って行きました。

「………あ、追わないと……」

しばらく呆然としていた観鈴でしたが、
すぐに我に帰り、ウサギ達の後を追うことにしました。





シーン2 扉の部屋


ウサギ達を追って通路を抜けた観鈴でしたが……

「あ、あれ?」

角を曲がった観鈴の前には誰も……
ついさっきこっちの方に来たはずのウサギも居ませんでした。

そこは、天井の低い広間になっていて、壁にはずらりと扉が並んでいます。

「え、えっと……どこに行ったのかな……?」

観鈴は、端から扉を開けようとしてみましたが、全て鍵がかかっています。

「が、がぉ……開かない……どうしよう……」

観鈴は悲しそうに呟やき、元の場所に戻って来ました。
すると、そこには小さなガラスのテーブルがあって、
その上には、とても小さな金色の鍵がのっていました。

「あ、きっとこの鍵で開けるんだね。にはは、みすずちん、あたまいい」

鍵を手に取り、また、片っ端から鍵穴に刺しこんで行ったのですが、ぴったり合う鍵穴はありません。
つまり全部はずれです。しかし、観鈴は諦めませんでした。

もしかしたら、見逃した扉があるかも……

そう思い、はじめからもう一度回ってみることにしました。
すると、カーテンの裏にさっきは気付かなかった、30cmぐらいの小さな扉を見つけました。
金の鍵を刺しこんでみると、ぴったりです。

「やった。これでウサギさん追いかけられる」

と思ったのもつかの間、よく考えると、30cmの穴なんか通れるはずがありません。
観鈴はどちらかと言えば小柄な方でしたが、それにしても、やっぱり無理です。

扉の向こうには、美しい庭園が見えているのですが、通れないのでは仕方がありません。
なんとか手は無いものかと、テーブルのところに戻ってみました。
すると、テーブルの上には、小さな瓶が一本乗っていました。

「あれ? さっきは無かったよね?」

不思議に思いながらも、瓶を手に取ると、首のところに――

【オレっちを飲みやがれコンチクショー】

とかいた札が巻きつけてあります。

「よく判らないけど……のんでいいんだよね?」

純粋な観鈴はなんの疑いも無く、瓶を口にします。
瓶の中身はゲル状の液体(?)でした。

じゅるじゅるじゅる……ずぞぞぞぞ…………

瓶を逆さにして、なんとか全部のみ干す事に成功しました。

「にはは……ゲルルンジュースだね」

と、次の瞬間、耳鳴りがしたかと思うと、観鈴の背丈は25cmぐらいまで縮んでいました。

「えっと、ちっちゃくなった……のかな? あ、だったらあの扉が通れるよね?」

物事をあまり深く考えない性質の観鈴はすぐに扉のところに向い駆けて行きましたが……

「が、がお……閉まってる。なんで?」

扉は閉ざされ、ご丁寧に鍵まで掛かっています。
金の鍵はさっきテーブルの上に置いたまま。

急いで戻ってみると、確かに鍵はテーブルの上にありましたが、
小さくなった観鈴にとってそれは遥かな高みです。

「えっと……どうしよう……」

観鈴は、脚をよじ登ってみようとしましたが、滑って上手く上れません。
何度やってもだめです。

……仮に上手く上れたとしても、脚は天板の中央から伸びているので
鍵には絶対に手が届かないのですが、それに気付くことなく観鈴の挑戦は続きます……


しばらくして……


「だめ…登れない」

……どうやら諦めたようです。
疲れ切った観鈴は、その場に座り込み、鍵を恨めしそうに見上げます。
すると、上から何か箱のような物がゆっくり落ちてきました。

手に取るとそこには……

【食え!!】

と書かれています。

箱を開けると中には、栗まんじゅうが、一つ鎮座していました。

「さっきは縮んじゃったから、これを食べたら大きくなるのかな? うん、きっとそうだよね」

これは名案! とばかりに、一口だけ栗まんじゅうをかじってみたのですが、何も起こりません。
足りないのかな? と思い、二口、三口…とうとう全部食べてしまいました。

……びよん

「が、がお……」

大きくなりすぎたようです。

天井に頭がつっかえ、不自然な体勢になりながら、
観鈴は、なんでこうなってしまったんだろうと、考えていました。

これだけ大きくなったのですから、確かに鍵は下に見えているのですが、
なんだかそれ所じゃないような気がします。
第一、この状態で鍵を手にしようにも、鍵が小さすぎるので上手くつかめません。

それ以前に、このままでは動く事すらままならないですから、一生このままかも……
そう考えると、観鈴はなんだか無性に悲しくなって、とうとう泣き出してしまいました。


…………


「ぐっ…みすずちん、強い子、泣いちゃ駄目っ、めっ」

ぽかりと、自分の頭をたたき、なんとか泣き止む事には成功したようですが、
そのときには、観鈴の流した涙で、広間の半分程を被う大きな水溜りができていました。

しばらくすると、遠くからパタパタと言う小さな足音が聞こえてきたので、観鈴がそちらの方を見ると……

『やべぇ……遅刻確定か!?』
『誰の所為だと思ってんのよ!』
『七瀬か?』
『アンタよ!!』
『二人とも、早くしないと……』

さっきのウサギ達が、大急ぎで目の前を駆け抜けて行きます。

観鈴は、どうしようかと困りきっていたので、
藁にもすがる思いで、目の前のウサギ達に声を掛けてみることにしました。

「あ、あの…」

『ん? どあっ!? なんだ、伝説巨神か!?』
『こ、浩平……どうするの?』
『こんな時は……行け! 斬り込み隊長七瀬!』
『まかせてっ! ……って何でアタシなのよ!? 冗談じゃないわ!』
『七瀬……お前の覚悟、確かに受け取った……ぐっ……行くぞ長森!』
『あ、浩平!? ……いいのかなぁ……』
『振り返るな、一気に駆け抜けろ! 七瀬の死を無駄にするんじゃない!!』
『こらぁ〜! 勝手に殺すなぁ〜〜!!』

ウサギ達は、余程驚いたのか、
口々に何か言いながら手に持ったものを放り出し、暗がりの中に逃げて行きました。

白い手袋にステッキ、小さな袋……

「あれ……?」

その小さな袋は、包装がとけ、中からプレーンのクッキーが顔を覗かせていました。

「あ……あの! ……行っちゃった……どうしよ、これ……」

観鈴は、これを食べたらもしかしたらまた小さくなれるかも……とも思ったのですが、
流石に人のものを勝手に食べるわけには行きません。

「あ、でもいい匂い……」

クッキーは焼き立てらしく、おいしそうな匂いが漂ってきます。

「匂いをかぐぐらい……いいよね?」

いい匂いを嗅ぐと、それだけで幸せになってきます。
すると……

「あ、あれ?」

手に持った袋がどんどん大きくなっているような気がします。
いえ、そうではなく、どうやら観鈴が縮んでいるようです。

「え? わ、わ、あ、クッキーの匂い……?」

何と無く、それがクッキーの匂いのせいのような気がして、観鈴は慌てて袋の口を閉じました。

「……あ、とまった」

袋の口を閉じると、縮んでいた背がぴたりと止まりました。どうやらまた25cmぐらいになったみたいです。

「あ、でもこれなら扉通れるよね」

そう考え、扉の元に駆け寄ったのですが……

「が、がお……鍵、忘れた」

見ると、金の鍵は、きちんとテーブルの上に置いてあります。

「えっと……鍵、取りに……わっ!?」

バシャァァァン!

観鈴は、足元の水溜りに落ちてしまいました。

「しょ……しょっぱい……これ、さっきの涙?」

すぐに水溜りから這い上がろうとしたのですが、
不思議な事に、今まで立っていた筈の床がどこにも見当たりません。
仕方ないので、陸地を探して泳ぐ事にしました。



しばらく泳いでいると、周りには何時の間にか沢山の動物が――
それもただ一方を目指して泳いで行きます。

「あっちに何かあるのかな? あ、もしかして岸があるのかも……」

観鈴は、動物達が向う先を目指して、ちゃぷちゃぷと泳いで行きました。





シーン3 浜辺


ようやく岸に辿り着くと、そこには、体中びしょぬれの鳥や獣が、
揃いも揃って不機嫌そうな顔でがやがやと騒いでいました。
斯くいう観鈴も当然びしょぬれです。

「服…乾かさないと…」
『乾かす? 今、誰か乾かすと言いましたか?』

群の中から一匹のネズミが出てきて言いました。

「あ、うん、言った」
『判りました。任せてください。皆も集まってください。私がすぐに乾かしてあげましょう』

みんなは、ネズミを中心にして大きく輪をかいて座りました。
観鈴も、ネズミの方を固唾を飲んで見まもります。

『えっへん』

ネズミはえらそうに咳払いをすると……

『いいですか? まずですね、体を乾かすと言う事は心を乾かすと言う事。
 心が乾けば体も自然に乾くのが道理……そうですね?』
「え? ……そう……かな?」
『そうです! そこでこの私があなたの心をバッチリ乾かします』
「そ……それはちょっと……いやかも」
『シャラップです! 口を挟むことは許されません! 黙って聞いててください!!』
「う……」
『え〜……昔々、あるところに――』

ネズミは、かってな理屈をこねたかと思うと、突然語り出しました。

『――浦島太郎と言う若者がいました。あるとき太郎が浜辺を歩いていると――』
「あ、そのお話、知ってる」
『口を挟むな……と言いました。次は無いですよ?』
「が……がお……」
『全く……えっと、どこまで話しましたか……あ、亀がガキ共に虐められてたんです。
 それでですね、心優しい太郎は、ガキから亀を買いとって逃がしてあげようとしたんですね、
 それで……何でしたっけ…あ、玉手箱! そう、亀に玉手箱を貰ったんです。
 で、玉手箱を開けた太郎は、おじいさんになってしまいましたとさ。
 めでたしめでたし』
「………」

ネズミの話しは肝心なところが丸々抜け落ちていたため、なんの事やらさっぱりわかりませんでした。

『……この話しは、安易に人を信じるなと言う教訓がこめられたお話ですね』
「……なんか違う」
『違いません! これこそ真実です』
「う……うん……」
『で……どうですか? 乾きましたか?』

確かに心の中を砂嵐が舞っているような感じはするのですが、体のほうはちっとも乾いていません。
…当たり前です。

「えっと……駄目……乾かない」
『……おかしいですねぇ……あ、じゃあとっておきの話しを――』
『無駄ですよ。そんな方法で乾くわけありません』

それまで黙って様子を見ていたドードー鳥が立ちあがり、厳かな口調で言いました。

『大体、あなたの理屈はまるで見当違いです。そもそも――』
『やかましいですっ! 私は間違っていません! 絶滅種の分際で何を偉そうにっ!』
『絶滅種とはどういう意味ですか?
 私が今、ここにこうしている以上、絶滅なんかしてるはずはありませんよ。
 ……まあ、それはいいのです。私が言いたいのは――』

ドードーは、ぐるりと聴衆を見まわすと、小難しい言い回しで何やら話し始めましたが、
観鈴は言葉の意味を半分も理解できませんでした。

でも、どうやら他の動物達もそうだったようで、

『何言ってるのかわからないよぉ? もっと分りやすくはなしてくれないかなぁ』
『できれば、日本語でしゃべってほしいの』

と、アヒルや、小鷲が口を挟みます。
ドードーは、少々ムッとした表情をしましたが、

『――つまり、このネズミに任していたのでは、私達は何時まで経っても濡れたまま……と言う事です』

こう言われてはネズミも黙ってはいられません。

『言いましたね? 絶滅種が……私に盾突く気ですか?』
『ドブネズミ風情が……まだ言いますか。あなたには少しお仕置きが必要なようですね』
『ふん……返り討ちですよ』
『では……格の違いと言うものを教えてあげましょう』

そして、ドードーとネズミの壮絶な死闘が始まりました。
あまりと言えばあまりの展開に観鈴は茫然自失気味です。

『どうしました? もう御終いですか……? 大口を叩いた割に情けないですね……
 やはり所詮ドブネズミはドブネズミと言う事ですか……』
『くっ……卑怯です! あなた大きすぎますよ!! もっと縮んでくださいっ!!』

しかし、やはり体格の差は大きいのか、ネズミは終始押され気味です。

『勝手な事を……しかし、これで終りです!』
『ちっ! これだけは使いたくなかったですが……仕方ありません!』

そう叫んだかと思うと、ネズミは首に巻いていたチェック柄の布切れを広げ、ドードーを包み込みました。

『なっ……!?』

直後、短い悲鳴と共に、ドードーの姿は跡形もなく消えてしまいました。

『……ふ……絶滅種は素直に滅んでいればいいんですよ……』
「鳥さん……消えちゃった……どこにいったの?」
『どこへ行ったかは私にも判りません。行き先は……このストールに聞いてください。
 ……世界の果てか、異次元か……まぁ、どのみちロクな場所には行ってないでしょう……絶滅種ですし』
「が、がお……」
『さあ、邪魔者は消えました。私が正しい事を証明するため、
 あなたには私の話術によって存分に乾いてもらわなければいけません……準備はいいですか?』
「あ……でも、もう乾いちゃった」
『どうゆう事ですか!? 何故? ……いえ、そもそも誰が勝手に乾いて良いと言いました!?』
「そんな事言われても……」
『裏切りです! これは私に対する重大な裏切り行為です!! 裏切り者には死を!!』
「えっ? そんな……」
『そ、それはあんまりじゃないかなぁ?』
『酷いの』

他の動物達も、ネズミのあまりに自分勝手な言い分に、ざわざわとざわめき出します。

『む、あなた達も私に盾突くのですか? ……と言う事は敵ですね!?』
『え……』

哀れ動物たちもストールの餌食です。止める暇もありません。あっという間でした。

『後はあなただけです……覚悟は良いですか? 良いですね? では、さよならです』
「わ、わ、わ!?」

ネズミは、一瞬たりとも躊躇せず、観鈴をストールで包み……
そして……浜辺にはネズミを残し、誰もいなくなりました。

『……闘いとはいつも虚しい物ですね……ま、それはそれとして、さっさと帰りましょう。
 バニラアイスが私を呼んでいます♪』

ネズミは、嬉しそうに鼻歌なんか歌いながらどこかに行ってしまいました。





シーン4 キノコの森


さて、ネズミの怪しい技によってどこかに飛ばされてしまった観鈴ですが……

「い、いたた……ここは……」

先ほどの場所から、そう離れていない森の中にいました。
しばらく途方にくれていたようですが、今までの経験からかすぐに立ち直り森の中を歩き出します。

すると……

『――なんで、もっと早く気付かないないんだよ!?』
『知らないよ! だって浩平、出るとき持ってたじゃない!』
『何やってんのよ、全く……とにかく早くしないと!』
『んなこたぁ、言われなくても判ってるよ、だからこうやって走ってんだろ!』
『そもそも、何でアタシまでアンタの忘れ物に付き合わなきゃなんないのよ……』
『忘れたんじゃない! それに、ここまで来たら一蓮托生、死なば諸共だ!』
『うん、そうだよね』
『瑞佳は折原を甘やかし過ぎだって。大体アンタ、さっきアタシの事見捨てようとしたじゃない』
『……とにかく走れ!』
『誤魔化すなっ!』

森の奥のほうから、ウサギ達の声が聞こえてきました。

「あ、うさぎさん……待って!」

観鈴は、すぐに声の聞こえた方に向かって走り出しました。
しかし、体が小さいままなので、地面に積もった小枝や枯葉が邪魔でうまく走る事が出来ません。

観鈴が走るのに難儀している間にもウサギ達の声はどんどん遠ざかって行き……
とうとう聞こえなくなってしまいました。

「どうしよう……えっと、とにかくもとの大きさに戻らないと……観鈴ちん、ふぁいと!」

観鈴が、決意も新たに再び歩き出すと……

ザ―――――――……

「わ、いきなり雨?」

観鈴の言ったとおり、なんの脈絡もなく、本当にいきなり、大雨が降り出しました。

「雨宿りしないと、風邪ひいちゃう……」

観鈴は、これは大変と、大慌てで近くにあったキノコの笠の下に逃げ込みます。

「よかった、あんまり濡れてない」
『……』
「……」
『……誰?』
「わ!?」

突然話し掛けられ、慌てて振り向くと、キノコの裏側にイモムシが立って(?)いました。

「えっと、イモムシさん?」
『……』
「……あの」
『……何か用?』
「え、ううん……」
『そう……』
「……」
『……』
「……あの」
『……用があるの?』
「別に用はないけど……」
『私も、無いです』
「……」

確かに観鈴は雨宿りをしているだけなので、イモムシに用はありません。
しかし、ただ黙って立っているのも違う気がして、頑張って話し掛けてみるのですが、
イモムシは大変無口らしく、会話が全く成立しません。
このまま雨が止むまで待っていても良いのですが、観鈴は再びイモムシに話し掛けます。

「イモムシさん、あの……」
『……勝手に変な名前で呼ばないでください』
「え、違うの?……じゃあ」
『……』
「あ、わたしは観鈴。観鈴ちんって呼んで欲しい」
『……』
「えっと、あなたの名前も教えて欲しいな」
『嫌です』
「え……」

相変わらず会話らしい会話は成立せず、
辺りは非常に居心地の悪い空気に包まれています。
しかし、この場から逃げ出そうにも、外は大雨のため、どうする事も出来ません。

「えっと、あ、そうだ、私大きくなる方法さがしてるの。どうすれば良いかな?」
『牛乳でも飲んでください』
「あ、そうじゃなくて――」

観鈴は、イモムシ(仮)に、これまでの事を説明しました。
イモムシは、相変わらずただ黙って遠くの方を見つめていました。

「――それで、元の大きさに戻れたら良いなって」
『……』
「あの……」
『まだ何か?』
「が、がお……」

イモムシはどうやら話を聞いていなかった様です。
観鈴はちょっと泣きそうになりながらも、もう一度初めから説明をはじめようとすると、
イモムシは小さなため息を一つ、そして……

『片方を食べると大きく、反対側は小さく』

と、一言つぶやき、立ち去って行きました。

不思議な事に、雨はイモムシが立ち去ると、降り初めと同じように突然ぴたりと止みました。

「あ、ちょっと待って、片方って、なんの……?」

観鈴が呼びとめると、イモムシは律儀にも観鈴の側まで戻ってきます。
それと共に再び降り出す雨。
どうやら雨はイモムシの周りだけ降っているようです。

『ワッフルです』

イモムシはちらりと視線を上にやり、一言だけ呟くと、
今度こそ雨と共に去って行きました。

「……?」

観鈴は、イモムシが見た方向に目をやると……

「あ、ワッフル……」

それまでキノコの笠だと思っていたものは、網模様とほんの少しこげ色のついたワッフルだったようです。
よく見ると、周りにあるキノコも全てワッフルでした。

観鈴は、手ごろな大きさのワッフルを見つけると、両手を伸ばし両端をほんの少しずつむしりとりました。

「でも、片方ってどっちだろ? ……食べてみればわかるかな?」

あまり深く考えずに右手に持ったワッフルの欠片を一口……

ド……ォン……

次の瞬間、観鈴は天を突くような巨人になっていました。
しかも、体が側に生えていた大木に絡まってしまい身動きが取れません。

「大きくなりすぎ……」
『追っ手!?』
「え?」
『完全に撒いたと思ったのに……こんな所まで追ってくるなんて!』

見ると、鼻の辺りで、両手いっぱいの鯛焼きを抱えた小鳥が何やらわめいています。

『こうなったら、じつりょくこーしで追い払うしか……』
「わ、ちょっと待って、わたし、追っ手なんかじゃない」
『そうなの? じゃあボクが何を持っているのかも知らない?』
「え、たいやきでしょ……?」
『……! それを知ってるって事はやっぱり追っ手なんだね!? ボクはだまされないよ!』

知ってるも何も、これ見よがしに両手に抱えているのだから観鈴でなくても見ればわかります。
しかし、それを言っても小鳥は全く聞く耳を持たずに何やらわめきながら観鈴を突っついてきました。

『あっちいっちゃえ、えい、えい』
「い、いたい、いたい」

実際、そんなに痛くは無かったのですが、
身動きできない状況で一方的に攻撃されるというのはあまり嬉しい状況ではありません。

「どうしたら……あ、そうだ」

観鈴は、木を折らない様に丁寧に左手に引っかかっていた枝を外すと、
手に持っていたワッフルの欠片を一口かじりました。

パヒュ……ン

すると、思ったとおり体は縮み、自由にはなれたのですが……

「なんで、ちょうど良い大きさにならないかな……」

今度はまた、縮み過ぎてしまったようです。

観鈴は、ワッフルを見つめしばらく何かを考えていた様ですが、
何か閃いたのか、手をぽんと打つと、右のワッフルをひと舐め……

ッ……ポン!

「……ん……これぐらい……かな?」

どうやら、納得の行くおおきさになれたようです。

観鈴は、自分の体を確認すると、再び森の中を歩き始めました。





シーン5 森の中


薄暗い森の中、観鈴はウサギを探してさ迷います。

「はぁ……うさぎさん、どこいっちゃったんだろ……」
『よぅ』
「え? 誰かいるの?」

突然、横合いから声を掛けられ、振り向きますが、そこには誰もいません。

『こっちだこっち』
「どこ?」
『どこみてんだ、こっちだよ』

声は観鈴の、前後左右、あらゆる方向から聞こえてきます。

「ね、隠れてないででてきてよ」
『隠れる? なんで俺が隠れなきゃならんのだ?』

その声に合わせて、まるで闇の中から溶け出す様に一匹の猫が観鈴の目の前に姿を現しました。

「ねこ…さん?」
『おう、ねこさんだぞ。ま、とは言ってもそんじょそこいらの猫とは訳が違うがな』
「どう違うの?」
『何が?』
「え? 今、訳が違うって……」
『おう、違うぞ』
「だからどう違うのかなって」
『さあな。でも違うってからにはどっか違うんじゃないのか?』
「……そうなんだ、じゃあ、わたし、白うさぎさん探さないといけないから、またね」

観鈴は、これ以上話していてもなんだか不毛な気がして、
踵を返し、その場を立ち去ろうとしました。

『まあ、待てよ』

と、観鈴の目の前にはさっきの猫。いつの間に移動したのでしょうか?

『あんた、白ウサギを探してるんだろ?』
「え、どこにいるか知ってるの?」
『いや、知らない』
「……」
『でもま、俺がもし白ウサギを探すんだったら、まず帽子屋んとこに行くけどな』
「帽子屋さん?」
『ああ、いかれ帽子屋だ』
「でも……」
『帽子屋は嫌か? 三月ウサギもいるぞもちろん――』

猫は、ふっ……と姿を消すと、観鈴の側に現れ……

『そいつもいかれちまってるけどな。ははは……』

耳元で、そう囁きました。

「わたし、いかれちゃってる人とはあんまり知り合いになりたくない……」
『何言ってんだ、ここの奴らはみんないかれちまってんだよ。
 お前ももう気付いてるんじゃ無いのか――もちろん俺も……あんたもだ』
「わたし、いかれてなんかいない……」
『ここで俺と話してるってのがその証拠さ。ま、じきに判るよ。それじゃな』

猫は、言いたい事を言うと足の方から、闇に溶け込む様に消えていきました。
と、思うと顔だけが再び現れ……

『おっと、俺の名前は『チェシャ猫』ってんだ、覚えときな。別に忘れちまっても問題ないけどな、ははは……』

そのまま笑い声だけを残して今度は完全にいなくなりました。



観鈴はしばらく呆然としていましたが、ふと楽しげな音楽が耳に入ってきた気がして我に返ります。

「なんだろう……こっちから聞こえてくる」

観鈴は音楽の聞こえてくる方に足を運びました。





シーン6 いかれ帽子屋のお茶会


見えてきたのは小さな家。
木製の小さな門をくぐると、
そこでは20人は座れそうなとても大きなテーブルで
二人の人影が楽しそうにお茶会をしている姿がありました。

「帽子屋さんと三月ウサギさん……かな?」

『舞、生まれなかった日、おめでとう〜』
『……ありがとう、佐祐理も、おめでとう』
『あはは〜、ありがと、舞』
『く〜……』

いえ、よく見ると、二人ではなく三人でした。
テーブルの隅でネズミが気持ちよさそうに眠っています。

観鈴は、少し疲れていたので、空いている席に座りしばらくその様子を眺めていました。

『佐祐理……』
『ふぇ? どうしたの、舞?』

どうやら、三月ウサギが観鈴に気付いたらしく、帽子屋に何やら耳打ちしています。

『あはは〜……あなたは一体どなたですか〜?』
  「あ、わたしは観鈴、ちょっと聞きたい事が――」
『……そこはあなたの席じゃない』
「え、でも、こんなに空いてるんだし……」
『それでも、招待もされていないのに勝手に座るものじゃないですよ』
『……そう、失礼』
『失礼……だお〜』

それまで眠っていたネズミまでもが起き上がり、観鈴を責め立てます。
もっともネズミはそのまま眠り込んでしまったので、寝ぼけていただけかもしれませんが。

「あ、ごめんなさい……」

観鈴がしゅんとしていると……

『ふぇ? どうして謝るんですか〜?』
「え、だって……」
『何か悪い事をしたの?』
「えっと、だから……」
『ああ、ところでお茶はいかがですか?』
「え……あ、いただきます」
『……はい』
「ありがとう。えっと、ごめんね、お誕生会を邪魔しちゃったみたいで――』
『お誕生会……?』

三月ウサギは、観鈴に差し出そうとしたプラスティック製のカップをさっと引っ込め、不思議そうに聞き返します。
ちょうど受け取ろうとしていた観鈴の手は空を切り、思わずつんのめってしまいました。

『あはは〜、お誕生会なんかじゃないですよ〜』
「え、でも……」
『今日は生まれなかった日』
「生まれなかった日……? ってなに?」
『?? 生まれなかった日は生まれなかった日』
『はぇ〜……生まれなかった日をご存知無いんですか〜?』
「う、うん」

三月ウサギは、信じられない……と言った様子で観鈴のことを見ています。
帽子屋は、軽く咳払いを一つすると……

『それでは、説明してあげますね〜。誕生日は一年に一回しかありませんよね〜?』
『そう、たった一回』
『でも、生まれなかった日は、一年になんと! 364回もあるんですよ〜』
『これなら毎日がお祭り』
『ね、凄いアイディアですよね〜』
「う、うん……そう……かな?」

観鈴は何か釈然としないものを感じましたが、言葉には出さないでおきました。

「あ、でも、だったら、わたしも今日は生まれなかった日」
『ふぇ〜……そうなんですか〜……世間は狭いって言うけど、本当ですね〜』
『凄い偶然』
『では、あなたも一緒にお祝いですね〜』
『おめでとう』
「……あ、ありがとう」
『ところで』
「え?」

お祝いは意外とあっさりとしていました。

『何か聞きたいって言ってた』
『あ、そう言えば言ってましたね〜。さあ、なんでも聞いてください。
 こう見えても佐祐理は以外と物知りなんですよ〜』
「えっと、実は――」

観鈴が、話の前に咽を潤そうとカップに手を伸ばそうとした時、

『と、その前に席を替えましょう』
『こっち』
「あ、でもまだお茶……」

まだ口もつけてないカップを置き去りにしたまま、
観鈴は強引に別の席に移動させられてしまいました。

『ささ、お茶をもういっぱいどうぞ〜』 「もういっぱい……って、さっきのお茶も間だ飲んでない……」
『じゃあ、最初から話して』

人の話を聞いてくれないのはここの住人のデフォルトの様です。
観鈴は諦めて、話を始める事にしました。

「えっと、始まりは……ぴろと一緒に丘の上で――」
『あはは〜〜〜〜』

何がおかしいのか、帽子屋は観鈴が話を始めた瞬間から笑い出しました。

『ピロって何?』
「ぴろはわたしの猫で――」
『猫!!?』

その瞬間、それまで気持ちよさそうに眠っていたネズミが突然おきあがり、
辺りの物を巻き込みながら走り出しました。

『ねこ〜〜〜〜〜ねこ〜〜〜〜〜〜〜』
『は、はぇ〜〜〜〜!?』
『佐祐理はそっちに回って!』
『う、うん!』
『あなたはジャムを取って!』
「え、え、こ、これかな!?」

観鈴は言われたとおり、側にあった赤いジャムの瓶を取り、ネズミの元に駆け寄ります。

『それを口に……早く!』

観鈴がネズミの口にジャムを突っ込むと……

『イチゴジャム……おいしい……』

ネズミは大人しくなり、そのまま再び眠ってしまいました。

『ふぇ〜〜……こんなに慌てたのは佐祐理生まれて初めてですよ〜』

帽子屋達は居住まいを正しながらもとの席に戻ってきます。

「ごめんね、わたしがよく考えないで――」
『そう、考えも無く話すものじゃない』
「ごめんなさい……」
『ふぇ…カップが汚れてしまいましたね〜、席を替えましょう』
「え、でもわたしのお茶は――」

観鈴は、再び口もつけてないお茶とお別れする事になりました。

『では、話の続きを聞きましょうか〜』
「えっと、だから、丘の上で――」
『その前にお茶はいかがですか〜?』
「あ、うん……でも……」
『要らないんだったらはっきりそう言えばいい』
「そうじゃなくて……」
『ふぅ、もういい、他の話をする』
『あはは〜、それは名案だね〜』
「わたしの話……」
『そういえば、ミサカカオリとミヤマユキミはどうして似てるんでしょう?』
「え、なぞなぞ?」

意味のわからない言葉でしたが、根がまじめな観鈴は一生懸命考えます。

「ミサカカオリと……ミヤマユキミは、なぜ似てるのか……」
『!?』
『ふぇ……今なんと言いました!?』

どうしたというのでしょう?
帽子屋と三月ウサギはどこか怯えたような目で観鈴のほうを見ています。

「え? ミサカカオリと……ミヤマユキミは、なぜ似てるのか……だよね?」
『さ、佐祐理……』
『はぇ〜……何て恐れ知らずな……』
『いかれてしまったのかもしれない』
「え、でもなぞなぞを出したのはそっち――」
『近寄らないで』
『あ、あはは〜……お茶でも飲んで、ね、落ち着いてくだい』

さすがの観鈴も、これにはムッときました。

「……もういい」
『お、落ち着いてください、落ち着いて……』

観鈴は、深くため息をつくと……

「もう、わたしは行くから、パーティーがんばって」
『パーティー?』
『ふぇ? なんのパーティーですか〜?』
「……生まれなかった日の、パーティー」
『生まれなかった日……』
『あ、そうでしたね〜。舞、生まれなかった日、おめでとう〜』
『……ありがとう、佐祐理もおめでとう』
『あはは〜、ありがと、舞』
『く〜……』

観鈴は、そのやり取りを横目で見ながら、門をくぐり、森の中に戻っていきました。





シーン7 夜の森


「はぁ、なんでこんな人ばっかりなんだろ……そろそろ帰ろうかな……」

白ウサギは見つかりませんでしたが、このままここにいると、
チェシャ猫の言うとおり、気が変になってしまいそうです。

「でも……どうやったら帰れるんだろ……道は無いし」

観鈴の言うとおり、森はただ、鬱蒼と木が生い茂っているだけで、道なんかどこにもありません。
それどころか、どうやら日が暮れてきたらしく、只でさえ暗い森はますます暗くなっていきます。

空にぱっかり浮かんだ三日月を見ていると、観鈴は、だんだん心細くなってきました。

「が……がぉ……」
『がお? なんだそれ?』
「え、あ、チェシャ猫さん」

上のほうから声が聞こえてきました。
見ると月だと思っていたのはチェシャ猫の口だったようです。

『よ、白ウサギには会えたか?』
「ううん、でも、もういい。おうちに帰りたい。でも道がどこにも無いし……」
『道? お前の道なんかあるもんか。ここら辺の道は全部女王のもんだからな』
「女王様……? でも、会った事無いし――」
『会った事無い!? んじゃ会っときな。よ……っ』
「?」

チェシャ猫は木から飛び降り様として……止めました。

『おい、ちょっと手を貸してくれ』
「え、うん」

チェシャ猫は、観鈴の手を借りて、ずるずると木の上から下りてきました。
どうやら高所恐怖症だったようで……確かにそこいらの猫とは訳が違います。

観鈴は、だったら登らなきゃ良いのに……とも思いましたが、口には出しませんでした。

『……すまん。どうも高い所はな……っと、それじゃな』
「あ、ちょっと待って、どこに行ったら女王様に会えるの?」
『そりゃ、どこでもいいさ。あっちに向かっても、こっちでもな。嫌でも会える。でも――』
「でも……?」
『ま、俺だったら、近道するけどな』

そう言って、チェシャ猫は今まで自分が立っていた木の中に消えてしまいました。

「あ……」

見ると、木には人が通れるほどの『うろ』があり、
その中には、前に扉の部屋で見たきれいな庭園が広がっていました。

観鈴は、ほんの少しどうしようかと迷いましたが、こんな所に長く居たく無かったので、
意を決して『うろ』をくぐり抜けました。





シーン8 女王の庭園


観鈴が女王を探して庭園を歩いていると、垣根の向こうから声が聞こえてきます。

『早くしろ、もう時間が無い』
『判ってるよ!』
『っつーっかあんたも手伝えよ!』
『嫌だ。一張羅が汚れるからな』
『あほか! 首撥ねられちまったら一張羅も糞も無いだろうが!』
『なんで俺が、間違って植えたのは、お前だろ』
『そりゃそうなんだけどさ……』
『女王様にその言い訳が通じると思うか?』
『む……それもそうだな……』

観鈴は、何事かと垣根の蔭から覗いてみると、
トランプの兵隊が必死に白いバラをペンキで赤く塗っているところでした。

「ね、どうして赤く塗ってるの?」
『え?』
『ああ、この馬鹿がさ、間違って白いバラ植えちまったんだ』
『いや、だってさ――』
『言い訳すんな、事実だ』
『ぐ……』

クラブの3が描かれた兵隊は、申し訳なさそうに俯いています。

『女王様は赤が好きだからな。間違って白いバラ植えちまったなんて知られた日にゃ……』
『――これだ……』

体に、クラブのAが描かれた兵隊が手で首を掻き切る仕草をしました。

「わ、首斬られちゃうの?」
『ああ、だからこうやって……』
『赤く塗ってるって訳だ』
「あ、だったらわたしも手伝う」
『そうか! そりゃありがたい』
『とにかくさ、もう時間がないんだよ』
『ほら、さっさと片付けるぞ』

観鈴と、トランプ兵……クラブのA、2、3は大急ぎで白いバラを片っ端から赤く塗っていきました。
そして、あらかた塗り終え、後少し……と言う所で、お城のほうからラッパの音が聞こえてきました。

『げ……!?』
『じょ……女王様だ!』
『く、間に合わなかったか』
『仕方ない、後はばれない様に祈るだけだ、行くぞ!』
『あ、ああ』

トランプ兵達は手に持ったペンキ缶を放り投げ、一目散に駆け出しました。

「え、あ、ちょっとま――」

しかし、Aが観鈴の手をしっかりと掴んでいたものですから、観鈴はトランプ兵に引き摺られていきます。
そして、大路の脇まで来ると、三人は揃って平伏……観鈴もつられて平伏します。

ちらりと上に目をやると、ハートの兵隊の一指乱れぬ行進が見えます。
ハートの兵が整列を終えると、門の方から白ウサギが走ってくる姿が目に入ってきました。

「あ、うさぎさんだ……」

ウサギ達は大急ぎで整列を終えたハートの列の横に着き、

『ま、間に合った……』
『浩平、早く!』
『お、おう……女王…陛下の…』
『あ〜、もういい、アタシがやるわ! ハートの女王の御成〜り〜〜〜』

ウサギの声に続いて、女王が姿を現しました。
そしてその後から……

『あ……と、王様も』

ぼ〜っとした王様も続きます。
辺りからは『女王様万歳』と、女王を称える声が聞こえてきます。

女王様と、王様は、満足そうに辺りを見まわしますが、次の瞬間、

『あら……』

女王の目に、塗りかけのバラがとまってしまいました。

「あ……」

女王は、スタスタと歩み寄りますが……
その口元は僅かに緩み、どこか嬉しそうに見えます。

『ふぅん……』

女王様は、塗りかけのバラをじっと見つめ……

『で、これは一体どう言う事かしら?』

見るもの全てを凍て付かせるような冷酷な笑みを浮かべました。

『随分となめきったマネをしてくれたみたいだけど……そんなに首を刎ねられたい訳?』

その一言に、クラブ達は震え上がり、口々に責任逃れを始めました。

『わ、悪いのは全部2です!』
『あ、てめぇ……違うんです、3の奴が!』
『そ、そもそも元はと言えばAが!』
『お前……! そうじゃない! 3が間違えたんだろう!』
『い、いえ俺は……そうだ、元凶はこいつで!』
「え、わたし!?」

クラブの3、最悪です。

『お、おまえ、そりゃないだろ』
『ああ、幾らなんでも、なぁ……』
『だ、だってさぁ……』

クラブ達の申し立てを黙って聞いていた女王でしたが、口元にふっと笑みを浮かべると……
『もういいわ……この3人の首を刎ねてちょうだい』
『げ』
『うそ……』
『なんで俺が……』

そして、クラブ達は揃ってハートの憲兵に連れられていきました。
女王はどこか満足げにその様子を見ています。

『さて……それで、あなたは一体何?』
「あの、わたしは――あれ?」

女王の後で何か動いたような気がした観鈴は思わず声をあげてしまいました。

『何?』
「いえ、女王様の後ろに……」

観鈴に言われ、女王様が振り向くと……

『よ、調子はどうだ?』
「チェシャ猫さん?」

チェシャ猫が居ました。女王の背中にぴったりと貼りついている所為で、女王は気付いていない様です。

『誰と話してるの?』
「あ、猫が……」
『猫? ……そんなものがどこに居るの?』
「ほら、女王様の後ろに――」
『後ろ……?』

女王は再び振り向くのですが、チェシャ猫は、消えたり、現れたりを繰り返し、
常に女王の死角に居るため、女王はチェシャ猫見つけられません。

『居ないじゃない……もしかしてあなた、わたしをからかっているの?』
「ち、ちがう……そうじゃなくて……」
『そ、ならいいわ。でも、覚えておきなさい、私を怒らせると……首、刎ねちゃうわよ』
「が、がお……」
『ははは……こいつ馬鹿だからさ、首刎ねる事に生きがい感じてるんだ。』
「あ……」
『今、なんか言ったかしら?』

女王はにっこりと笑みを浮かべていますが、額には青筋が立っています。
観鈴はふるふると首を横に振りますが……

『もう判っただろ、ご多分に漏れずこいつもいかれちまってるのさ』
『だ・れ・が・いかれてる、ですって?』
『アンタだよ、女王陛下殿』
「あ……」
『そう……あなたの首はよっぽど体と仲が悪いのね。そんなにすぐに別れたいんだ……』
「今のは、わたしじゃ……」
『だったら望み通りにしてあげるわ――』

そして、女王は、声高らかに宣言を……

『この子の首を刎ねなさ――』
『ね、雪ちゃん』
『なに!? それから雪ちゃんって言わない!』

しかし、寸でのところで、それまで、居たのかどうかすら判らなかった王様が遮ります。

『えっと、裁判とかいうのやってみたら?』
『裁判……?』
『うん、どうかな?』
『ふ……ん、そうね、いいわ、じゃ、すぐに準備して!』

こうして観鈴は裁判を受ける事になったのでした。





シーン9 女王の法廷


スペードの憲兵に連れられ、観鈴がやってきたのは、法廷です。
周りには、聴衆や、陪審員の姿も見えます。
観鈴が被告席に立たされると、入り口から白ウサギがラッパを吹きながら走ってきます。

『♪〜〜〜……! ♪♪……はぁ……はぁ……♪〜……』
『アンタ一体何考えてんのよ!? 走りながらそんな物吹ける訳無いでしょ!!』
『〜〜♪〜〜〜!! ……♪……』
『えっと、『仕方ないだろ、これしかなかったんだ』……だって』
『だからって、なんでよりによって尺八なのよ!? 大体それって『ラッパ』じゃないでしょ!』
『♪〜〜〜! ゲハッ……! ゴホッ……!!』
『ん〜……『似たようなもんだろ』かな?』
『…全然違うわよっ! …って瑞佳……なんであれを理解できるのよ……?』
『なんとなく……なんだけどね』
『♪! ゼー……ゼー……』
『あー……もうっ! 後、アタシがやっとくからアンタ達はそこに居なさい!』
『♪〜〜〜』
『うん、『後は頼んだ』だね』
『……』

白ウサギは、所定の位置に着き、挨拶を済ませると懐から紙を取りだしそれを読み始めます。

『……え〜、被告席の容疑者は――』
『……そんな所良いから、飛ばしなさい』
『え……』
『飛ばして』

女王は、承認はしたものの、裁判なんかどうでも良いと言う態度がありありと出ています。
早く終わらせて、あの言葉を言いたいのでしょう。

白ウサギは、少し微妙な表情をしましたが、女王に逆らう事など出来るはずも無く……

『……よって、女王を怒らせたのである……と』

女王は、満足げに笑みを浮かべると……

『それじゃ、判決ね』
「え、いきなり?」

観鈴は、裁判の事はよく知りませんでしたが、何か違う、ということは判ります。

『何か文句でもあるの!?』
「う……」
『じゃ、良いわね。この子の――』
『雪ちゃん、雪ちゃん』
『雪ちゃんって言うな! それで何!?』
『証人を呼ばないと、ね?』
『ん……じゃ、早くして』
『うん、証人を連れてきて』

王の提案を、女王はしぶしぶ承諾しました。
そして連れられてきたのは、三月ウサギです。
三月ウサギは、お茶会の途中だったのでしょうか? なぜか箸を咥えてえていました。

『何?』
『ちょっとこっち来てくれるかな?』

王様が、手招きすると、三月ウサギは訝しげな顔をしながらも王様に近寄ります。

『目をつぶっててね』
『???』

観鈴の位置からは見えないのですが、
王様は懐から何かを取り出すと、ウサギの前で何かやっています。

キュポン! キュッキュッキュ……

『くすぐったい』
『ん、もう良いよ。それじゃ、次の証人を呼んできて』

三月ウサギは、なんだか判らない、といった表情で、
その鼻の下にマジックで書かれたちょび髭を付けて帰っていきました。

さて、次に連れてこられたのは眠りネズミです。

『くー』
『…………』
『くー』
『なるほど。陪審員の人、書いといてね。えっと、次の人』

なんだかよく判りませんが、次は、いかれ帽子屋が連れてこられました。

『あはは〜』
『何が可笑しいの』

いかれ帽子屋は、連れてこられた時からずっと笑いっぱなしです。
女王は少しムッとして、いかれ帽子屋に尋ねました。

『それはもう、明日は舞の生まれなかった日なんですよ〜。今から楽しみで』
『あ、そう言えば今日は雪ちゃんの生まれなかった日だよ』
『あ、あら、そうだったかしら?』
『それは凄いですね〜。ではこの佐祐理から、女王様にプレゼントを』

いかられ帽子屋は、懐から何やら箱を取り出すと女王に手渡しました。

女王はまんざらでもないといった顔でプレゼントの包みを開くと、
そこには立派な王冠が入っていました。

『佐祐理はこう見えても帽子屋なんですよ〜』

こう見えても何も帽子屋は帽子屋なのですが、それはさておき、
女王は、その王冠を頭の上に載せ、ポーズを取ったりなんかしてます。

観鈴は、さっきからほったらかしです。
が、ふと女王の方を見ると、頭上の王冠が、何時の間にかチェシャ猫になっています。
重量が変わったのか、女王の首が変な方向に曲がっていますが、
周りに人達は元より、女王もそれに気付いていない様です。

「女王さま、ほら、頭の上」
『私の頭がどうしたのよ、もしかしてまた――』
「そ、そうじゃなくて、猫が――」
『猫!?』

観鈴は、しまった! と思いました。
そう、先程連れてこられた眠りネズミがまだここにいたことを忘れていたのです。

『ねこ〜〜〜〜〜ねこさん〜〜〜〜〜〜どこ〜〜〜〜?』
『ふぎゅ……!』

眠りネズミは、女王を撥ね飛ばし、いかれ帽子屋や、帰ったはずの三月ウサギが、
眠りネズミを捕まえるためその上を踏んづけていきます。

『ジャム!』
『ジャムをを持って来て下さい!』

「ジャム……って言っても……」
『ほれ、これを使いな』

困っている観鈴にチェシャ猫がジャムの瓶を手渡しました。

「あ、ありがと」

観鈴は、一応お礼を言うと、ジャムの瓶を持って眠りネズミに駆け寄ります。

「えっと、口に入れるんだったよね」

そして、チェシャ猫に貰った黄色いジャムを眠りねずみの口に……

『だ……だお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?』

眠りねずみは、ビクン、と痙攣し、観鈴の持っている瓶を撥ね飛ばすと、そのまま動かなくなってしまいました。
そして、眠りねずみに撥ね飛ばされた瓶は、きれいな弧を描き、女王の顔面に……

「あ」

がしゃーん!!



……辺りは、水を打ったように静まり返っています。

『ふふふ……ふふ……』

女王は、べったりと顔についたジャムを拭うと、肩を振るわせ、静かに笑い出しました。
その顔は、赤を通り越し、少し青ざめてすらいます。

『こんな屈辱を受けたのは、生まれて初めてだわ…』
『ゆ、雪ちゃん、落ち着いて、ね』
『お黙りっ!』
『わ……』
『そこのあなた……』
「え、わたし……」
『準備は良い? 覚悟は済んだ? 思い残す事は無いわね?』

女王は、凍て付くような双眸で凝視しながらツカツカと観鈴に歩み寄ります。
  観鈴は足が竦んでしまい、ただふるふると首を振るばかり。

『さあ! この子の首を刎ねてしまいなさい!!!』

女王の宣言と共に、周りにいたトランプの兵が、一斉に観鈴に向かって飛びかかってきます。

「あ……あ……」
『何やってんだ、逃げなくていいのか?』
「え……」

姿は見えませんでしたが、耳元でチェシャ猫の声が聞こえました。
我に返った観鈴は、間一髪、トランプ兵の突撃をかわし、一目散に駆け出しました。

『何やってるの! 早く捕まえなさい!』

観鈴は、ひたすら走ります。

庭園を駆け……
キノコの森を抜け……
海岸に出て……

『首を刎ねなさい! 首を――』
「はあ、はぁ……」

海を泳ぎきり……
扉の部屋に戻ってきました。

『どうだ、なかなか楽しいだろ?』

何時の間にかチェシャ猫が観鈴の隣にいました。

「楽しく……なんか……無い。捕まったら……殺されちゃう」

観鈴は、必死に走りながらチェシャ猫に答えます。

『そうか? それはそれで面白いじゃないか』
「面白く……ない。早く……帰りたい」
『ふ〜ん』
「ね……どうやったら……帰れるの?」

観鈴は、半分泣きそうになりながらチェシャ猫に問い掛けます。
チェシャ猫は、くるりと回ると、足元から消えながら言いました。

『なんだ、やっぱり帰りたいのか……』
「……当たり前、こんな所、もう、いや……」
『そっか、残念だ、アンタなら、と思ったんだけどな。
 でもま、それだったら話は早い。アンタはもう、帰ってるようなもんだ』
「え……?」
『向こうに光が見えるだろ? あそこが出口だ』

確かに、延々と続く通路の、遥か向こうに小さな光が見えます。しかし……

『首を――首を刎ねなさい!』

女王の声もすぐ側まで迫っています。

「だめ、間に合わない……捕まっちゃう」
『なんだ、根性ないな……だったら、近道もあるんだが』
「どこに!?」

既に姿が完全に消えてしまっているチェシャ猫に、それでも観鈴は問い掛けます。

『そりゃ……決まってるだろ、足元さ』
「え、……わ!?」

チェシャ猫の声と共に観鈴の足元はぽっかりと穴をあけ、観鈴は深い闇の底へ……

『そもそも近道ってのは――ありゃ、もう行っちまったのか、せっかちだな、全く……』





シーン10 丘の上


「――すず! 観鈴! もう、起きなさいってば」

ばっ!と音を立て飛び起きた観鈴の目の前には……

「え、わ! 女王様!?」
「は? なに、女王様? あたしが?」
「あ、あれ、おねえちゃん?」

心配げに観鈴を見つめる姉の姿がありました。
周りを見回すと、そこは丘の上で、側ではピロが気持ちよさそうに寝息を立てています。

「夢でも見てたの? 随分うなされてたけど……」
「ゆめ……? ううん、違う」

観鈴は姉に、あの不思議な世界での出来事を一生懸命話しました。
ですが、話を聞いた姉は、軽くため息をつき、

「……ほんと、観鈴はいつまで経っても子供のままね」
「が、がお……」
「もう、その口癖、お母さんにやめろって言われてるでしょ?」
「う……ん」
「あ、お母さんが呼んでたわよ。早く行った方が良いんじゃない?」
「わかった。お姉ちゃんは?」
「あたしもすぐ行くから、先に行ってて。もう少しで読み終わるの」
「うん」

観鈴は、ピロを抱き、丘を駆け下りていきました。
お姉さんは、その様子を慈しむ様に見つめ、その姿が見えなくなると、
やがて腰をおろし、読書を再開しました。

「ふふ、全く、あの子ってば……あら?」

『だから、名雪がもっと早く起きたら走らなくても済むだろ!?』
『でも、走るのは気持ち良いよ〜』
『俺は気持ちよくなくても良いから、ゆっくり行きたいんだよ』
『祐一って変わってるね』
『変わってるのはお前だ!』
『そんな事無いよ〜』

その時、お姉さんの目の前を、洋服を着た白いウサギが口々に何か喋りながら走り去っていきました。

「何? ウサギ……に見えるけど、ウサギの声帯で言葉が喋れるわけ無いし……
 と言う事は新種かしら……? ううん、でも……」

お姉さんはしばらく考え込み……



そして……



「とにかく、捕まえてみよ。新種だったら大発見だし……」



舞台は再び不思議の国へ……




The End



――――――――――――――――――――――――――――――――――


出演


観鈴
神尾 観鈴


チェシャ猫
相沢 祐一


いかれ帽子屋
倉田 佐祐理

3月ウサギ
川澄 舞

眠りネズミ
水瀬 名雪


ハートの女王
深山 雪見

ハートの王様
川名 みさき


イモムシ
里村 茜

ネズミ
美坂 栞

ドードー鳥
天野 美汐


アヒル
霧島 佳乃

小鷲
上月 澪

小鳥
月宮 あゆ

クラブのA
国崎 往人

クラブの2
北川 潤

クラブの3
住井 護


美坂 香里

ピロ
ピロシキ

時計ウサギ
折原 浩平
長森 瑞佳
七瀬 留美
(水瀬 名雪)
(相沢 祐一)





――――――――――――――――――――――――――――――――――




後書き

 というわけで、不思議の国のアリスです。
 某『アメリカネズミ会社』のアリスを見ていてなんとなく書いてみたわけですが……
 題材が題材だけに、内容や、キャスティングが他のSS作家さんの作品とかぶっているかも。
 名雪=眠り鼠なんかそのまんまですしねぇ……
 そうでない事を祈るばかりですが。

 ところで、これ……初めはKanonのキャラだけで書く予定で、アリス役はあゆのはずでした。
 が、人数が足りなくなったので、ONE、Airのキャラを足して再構成したのですが……
 全部書くと長くなりすぎるので、幾つかのエピソードは削りました。
 そう言うわけで、何人かのキャラは出演していません。
   (一番割を食ったのは真琴……でしょうか? ちなみにニセウミガメ役のはずだった)

 ええと、まあ……相変わらずまとまりの悪い文章ですが、読んでいただいて有難う御座います。
 ご意見、ご感想などいただけると嬉しいです。
 では。


――――――――――――――――――――――――――――――――――



2003/06/13  黒川






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